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85/99

85.疲れ

 かなりの時間を、マナに剣の相手をさせられ、結局その間に、黒子は王宮から、公爵家に帰ってしまった。

 なんのために、宰相の執務室から遠い、近衛隊の訓練場に来たのかと、思いながら、非常に機嫌の悪い、副将軍のグリムに、剣を返してから、ホークは一旦、執務室に戻った。


 部屋には、今日中に終わらせなければならない書類の山と、なぜか王である異母兄が、珍しくそこにいた。

「めずらしいですね、陛下。」


異母兄あにうえで、かまわないぞ。」

 ホークは、陽気に微笑む異母兄を、うんざり顔で見ると、ことさらゆっくり、ここにいる理由を説明しろと迫った。


「ああ、わかったよ。私の所に隣国の王より、内密に信書が届いた。」


「まさか、黒子を王太子の伴侶に、私には、王女を娶れですか?」


「なんだ、もう知っていたのか。どう思う?」


「お断りです。」

 ホークは、すぐに全否定した。


「まだ会っても、いないのにか。けっこう、綺麗な王女だそうだぞ。」

 王はニヤニヤしながら、ホークに話しかけてきた。


「王女なら、王子が妥当でしょ。」


「私の息子か?まあ、向こうが、それでいいと言うなら、別に、それでもかまわないが、黒子は、あちらさんが熱望している。私の娘というわけには、いかない。」


「身分が釣り合いません。」

 ホークは、事実をそのまま、指摘してみた。


「公爵家が、後見すれば、問題にならんさ。」

 なぜかわからないが、ホークはそれが、非常に面白くなかった。


「なんで、わざわざ公爵家が、後見しないと、ダメなんですか?」

 いつもと違う、異母弟の態度に、王は目を剥いた。


 珍しいな、ホークが感情を、こんなに顕わにするなんて。


「なんだ。なにが気に入らないんだ?」

 なので、素直にホークに問いかけて見た。


「今回は、我が国が圧勝したんです。それなのに、敗戦国のような態度でいるのは、面白くありません。」


 ほう、まあ、ホークの言い分も、わからなくないが、本当にそれで拗ねているのか?


「確かに今回は圧勝したが、長期戦になれば、物量にまさる隣国の方に武がある。それを考えれば、王子に我が国の女性を娶ってもらって、同盟を強固にするのは、意味があるさ。」


「黒子はこの国のものじゃなく、異世界人ですし、同盟を強固にするなら、彼女じゃ、役不足ですよ。」


「確かに黒子は異世界人だが、公爵家が後見して、結婚ともなれば、それこそ隣国の王に、恩を・・・。」

 王の言葉は、ホークの声に遮られて、最後まで言うことができなかった。


「あ・に・う・え。黒子の件も、私の件も、お断りしてください。」

 ホークは、王を睨むと、そう告げた。


 王は目を見開いて、ホークを見た。


 ちょっと、待て。


 今、ホークは、私を兄上を呼んだのか?


 あの、ホークが!


 王はご機嫌で、ホークを見た。

「わかった。可愛い異母弟おとうとの願いだからな、そうそうに、断りを入れておこう!」

 王はそう言うと、ご機嫌な顔で、宰相執務室を後にした。


 うん、ホークが私を兄と呼んでくれるとは・・・。

 うんうん、きっと明日は、雨だな。


 ホークは、王が出て行った後、執務机に突っ伏して、頭を抱えた。

 俺は一体、なにをしているんだ。

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