83.あれ、どうしてこうなった?
私の挙動不審をよそに、ホークは私の口に刺さっていた、フォークを取って、テーブルに置くと、一言呟いた。
「もう、拘束魔法は解いているが、まだ私の膝の上にいたいのか?」
へっ、拘束魔法がとけている!
私は体を動かすと、慌てて、ホークの膝の上から飛び退いた。
そのまま、動いて、執務室のドアを物凄い勢いで開けると、後ろを振り返らずに、飛び出した。
うそー、なんで、どうして。
やだぁー。
顔が赤くて、死にそう。
なにしてるの私。
しばらく走って、見慣れた風景の近衛隊の訓練場に来てから、やっと走るのをやめた。
なんで、あんなことに、なったんだろ。
お陰でせっかく食べたケーキの味も、わからなくなってしまった。
今のなに?
俗にいう、怖かった時、ドキドキするっていう、つり橋効果?
いやいや、私に限ってありえないから、そんなの。
うんうん。
「黒子?」
うひゃー
いきなり、声をかけられて、思わず、悲鳴をあげてしまった。
見ると、そこには将軍であるマナが、嬉しそうに、剣を手に立っていた。
「久しぶりに、どうだ、黒子。」
マナは、剣を黒子に差し出す。
「えっと、ですね。」
黒子は、隣で早くどこかに行けと、こちらを睨みつけているグリムと目があった。
彼の手にも、剣が握られていた。
どうやら二人で、これから模擬戦をしようと、していたところを、私が邪魔したようだ。
「えっと、申し訳ありません。急いで、隊長室に行かなければ、ならないもので、失礼します。」
私はそう言うと、急いで、二人の前から走り出した。
危なかった。
私は念の為、速度を落とさず、そのまま隊長室に駈け込んだ。
「あら、早かったじゃない、黒子。首尾はどうだったの?」
シルバーが、机から顔を上げて、問いかけて来た。
「えっと、二人仲よく、どこかに消えたので、たぶん、上手く行ったんだと、思いますけど?」
「だと思いますって、いい加減ね。でも、まっ、夫婦げんかなんて、他人様がどうこうしようが、いつの間にか、どうにかなっているんだから、気にするだけ、損よね。ところで、なんで、そっちは、息せききって、ここに駈け込んで来たの?」
「えっと、将軍に手合せを、させられそうになって、・・・。」
「あら、それは、まあ、大変だったわね。」
まったく、大変そうではない声で、慰められた。
そこにブランが、紅茶を入れて、シルバーがいる机に運んできた。
「取り敢えず、解決出来て、良かったですね。」
そうなのかな。
なんだかしっくり来なかったが、その後、ブランに送ってもらって、私は王宮を後にした。




