82.拷問
「何が違うんだ。」
イアンの問いかけに、アイリーンが涙ながらに弁解した。
「私、イアンに・・・、イアンに嫉妬させようと思って、それで・・・。」
「なんで、そんな必要があるんだ。」
イアンは、アイリーンの手を逆に掴むと彼女に迫った。
「だって、新婚旅行に行ったのに、イアンは私を・・・。」
アイリーンは、真っ赤になって、口ごもってしまった。
イアンも気がついたようで、同じように、真っ赤になって、彼女を見ている。
「それは、その・・・アイリーンに嫌われたらって、考えたら・・・。」
「なんで、そんなことで、イアンを嫌うの、そんなわけないじゃない。私はイアンのものに、なりたいのに・・・。」
そこで、二人の熱ーい会話を見事、粉砕する声が、無情に響いた。
「ここは、俺の執務室だ。よそでやってくれ。」
二人は、ハッとして見つめ合うと、どちらともなく手を繋いで、部屋を出て行った。
「それと、黒子。いつまで俺を、羽交い絞めにしている。」
私はハッとなって、手を離した。
ホークは、顔を擦りながら、私を睨みつけてきた。
「あっははははぁー、私ちょっと用事を思い出したから、これで・・・。」
私が逃げ出そうとすると、ホークの手が私を掴んだ。
ひょぇー
まずい、なんでか、わからないけど、非常にまずい。
早く逃げなきゃ。
私は、素早くホークが掴んでいた手を振りほどいて、逃走しようとしたら、部屋を出る手前で、体が動かなくなった。
あれ、なんで動けないの?
「まったく、なんて力だ。」
ホークは赤くなっている手を治癒を使って、治している。
そして、それが終わると、動けない私を、にこやかな笑顔を浮かべて、見つめて来た。
「えーと、宰相様。私はすぐに、近衛の訓練場に戻らないと、いけないので、この辺で失礼しますから・・・。」
「ほう、俺を背後から羽交い絞めにしたのに、その責任を取らずに、行けると思うのか?」
ホークが笑顔で近づいてきた。
「いえ、それはですね。流れと言いますか。そのーですね。」
どう言い訳すればいいの・・・。
私の内心を透かしたような笑顔を浮かべて、ホークは私の動けない体を抱き上げると、そのまま膝抱っこでソファーに座った。
ふと気がつくと、テーブルの上には、いつの間に、美味しそうなケーキが置かれていた。
ホークは、私を膝に抱いたまま、ケーキを一口食べる。
「さすが、ルドルフ作のケーキだぞ。舌が蕩けるようなうまさだ。」
なんですとぉー。
ルドルフ作のケーキ!!!
それをホークは、私に見せつけるように、私の顔の前を通って、自分の口に運んだ。
くそっ、やられた。
新手の拷問だ。
それも超効果的な・・・。
私の顔は、涙目になっていた。
「食べたいか?」
頷きたいが、素直じゃない、お年頃の私には、頷くことが出来なかった。
最後の一口がホークの口に中に消えそうになって、思わず私は、自分の口を開けていた。
ホークは、それを見て、その最後の一口のケーキを、なぜか、そのまま私の口に突っ込んでくれた。
ウマー。
なにこの蕩けるような口応え・・・、幸せ!
涙目の私をホークがじっと見ていた。
口にはフォークを咥えたまま、彼の美麗顔ドアップが私の目前に、そこでハッと気がついた。
これって、もしかして間接キッス!
いやぁー、28年間生きて来て、初めての間接キッスが、目の前の超美形。
ボッボッボッボッボッ
私の顔は、タコのように真っ赤になった。
どうしよう、心臓もドクドク言ってる。




