81.嫉妬
「ちょっと、言っておきますけど、私は男が好きなんであって、女の気持ちなんか、わからないわよ。」
「じゃ、ヘタレな男に手を出させる方法とかは、どう?」
「ヘタレな男なら、簡単よ。嫉妬よ。」
「「嫉妬!」」
思わず今度は、私とアイリーンがハモってしまった。
「そう、ヘタレな奴ッて、嫉妬ですぐ熱くなるから。でも、そこが可愛いのよね。」
シルバーは話ているうちに、他の方に頭が行ったようで、その後もなにかブツブツ言っていた。
嫉妬と言っても誰を相手に嫉妬させればいいのやら。
下手なやつに、嫉妬させると、侯爵で財力、実力ともある奴だから、後が面倒だし、うーん。
「嫉妬させればいいのね。なら、ホークに頼むわ。」
なるほど、ホークなら、財力・実力ともあるし、逆恨みされても別に、何も問題なく、処理できそうだから大丈夫か。
よしんば、何かあっても、私の良心も痛まないし、問題なし。
「宰相ねぇ。でも宰相って、アイリーン侯爵夫人の幼なじみなんでしょ。イアン侯爵が、嫉妬するのかしら?」
うーん、シルバーの意見は、もっともだ。
ただ単に、幼なじみと話してるになりそうね。
ふと横を見ると、アイリーンは何も聞いてない様子で、ひたすらどうすれば、ホークとイチャイチャできるかを考えているようだ。
まっ、取り敢えず、さっきみたいに、泣いてるよりは、いいでしょう。
私はそう思って、それ以上、何もいわなかった。
午後、アイリーンは、宰相室で執務をしているホークを尋ねた。
そして、なぜか、そこには私もいた。
なんで私もここにいるの?
私は関係ないでしょ。
ホークはうんざりした顔で、私とアイリーンを見ている。
「アイリーン、今度は何の用だ。」
「ホーク、お願い。今度は私に誘惑されて。」
アイリーンは、ウルウルした目でホークを見つめた。
ホークは珍しいことに固まっている。
少し経つと元に戻ったようで、何故かこめかみを指で揉んでいた。
「なんの話をしている、アイリーン。」
「だから、私に誘惑されて、頂戴。」
「はぁ?」
椅子に座って呆けているホークに、アイリーンが近づくと、そのままホークに抱き付いた。
そこに、書類を片手に持ったイアンがベストタイミングで、宰相室に入って来て、その状況を目にする。
イアンの書類を持った手が、わなわなと震えた。
「ホーク、てめえ、アイリーンに何している。」
「おい、何の誤解を・・・。」
ホークは問答無用で、イアンに胸ぐらをつかまれ、椅子から引きずり上げられた。
「離せ。」
ホークがイアンの手を振り払う。
「逃げるな、ホーク。」
私は、サッとホークの背後に回ると、彼を羽交い絞めにした。
「よし、黒子。そのままにしてろ。」
イアンがホークの顔に、右ストレートを放つ。
良い音がして、見事に入った。
「やめて、違うの、イアン。」
そこに、アイリーンがイアンの振り上げられた腕を取った。




