76苦痛のお茶会
私は、その後、ホークに連れられ、宰相室から公爵家に魔法陣で戻って来た。
やっと王宮の舞踏会から解放されて、気分は最高だった。
公爵家で、着せられたドレスを脱いでメイドさん達に返すと、はなれの屋敷に戻って、お風呂に入り、ホッと一息ついた。
疲れていたせいで、すぐに眠ってしまった。
すっかり昨日の会話を忘れて、翌日、食事を終えて、北門の砦に行こうとした所、いきなり、マナに拉致られ、馬車に詰め込まれた。
ふと、マナを見ると、隣の座席には、バスケットを抱えたルドルフがいた。
ルドルフ=バスケット、イコール、絶品料理!
私は、結局、バスケットに動きを封じられ、そのまま素直にそこに座った。
マナが私の視線を見て、ニヤリと笑った。
「公爵家の最終兵器は、ルドルフ作の絶品料理だな!」
ぼそりと呟かれた言葉が、私の胸に残った。
そういえば、昨日の舞踏会でも、今にも花火がうちあがりそうな状況を、ルドルフ作のケーキで、見事収拾されていた。
うむ。
たしかに公爵家の最終兵器は、ルドルフ作の絶品料理だ。
私は心の中に、マナに一票をいれていた。
私がアホなことを考えているうちに、公爵家の馬車は王宮についていた。
公爵家の下令が門番に何ごとか話すと、馬車を降りることなく、そのまま門を通り抜けた。
えっ、いいの?
「何を気にしている、黒子。」
私が唖然としているのを見て、マナが声をかけてきた。
「馬車の中、確認しなくて、いいんですか?」
「ああ、私たちは公爵家だからな。」
マナはそう言うと、そのまま座席に深々と腰を下ろした。
そう言えば、いつもストーカー、もとい一緒にいるグリム副将軍は?
「まだ、なにか質問か?」
「あのー、グリム副将軍は?」
「ああ、あのバカは、今、ホークの所で書類仕事だ。昨日の事件を思えば、当然だ。」
かなり偉そうに、マナが説明した所で、馬車が止まった。
サッとルドルフが立ち上がると、馬車の扉を開けて、先に降りた。
マナが次に降り、私もその後に続いた。
出ると、そこには王宮に務めるメイドさんが、ズラリと並んでいた。
中でもひときわ威圧感のあるメイドさんが、マナと私を先導してくれた。
「こちらです。」
私たちは、彼女の後について、王宮の奥に向かった。
よくわからない同じような通路を、何度も曲がってから、花が咲き乱れる庭に辿り着いた。
そこには、昨日の舞踏会とは違った、清楚系のドレスを着た、赤毛の巨乳美女がいた。
「マナ!」
「レイン、すまん。遅くなった。」
まるで、映画の中いる恋人たちがよく言う会話が、流れ、レインがマナに抱き付いた。
「遅いわ、マナ。待ちくたびれたわ。さあ来て、紅茶が冷めてしまうわ。」
レインはそう言うと、一瞬マナの背後をチラリとみた。
「よかった。あのバカは置いてきたみたいね。」
「元夫婦だろ。そこまで嫌わなくても、いいんじゃないか?」
えっ、グリムがレイン様の元夫と言うことは、・・・、まさか!
この人、前王妃様。
そう言えば、絵本もとい、記憶クリスタルで見た人を少し老けさせ・・・。
ギクリ。
なぜか老けの所で、巨乳美女にじろりと睨まれた。
えっ、口に出して言ってないよね、私。
レインの視線にマナが気がついて、私に声をかけてくれた。
「すまん、黒子、忘れていた。」
「まあ、昨日ぶりね、黒子。さあ、こっちに来て、一緒に座りましょ。」
口を開けた真っ赤な蛇に、睨まれた心地がした。
行きたくない。
マナ様、ずっと忘れたままで、良かったです、わたし。




