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74マイムマイム

 私はフリーズしている間に、ホークの腕から、アンドリュー王子の手に渡されていた。


 うおー、うそだろ。

 なんでこんな大観衆の面前で、前世で言う”マイムマイム”を踊らにゃならんの。

 いやだぁー。


 小学生でも、中学生でも、ましてや、高校生でもないんだぞ、私は・・・。

 何を隠そう、鼻も・・・いや違った、花も恥じらう、中だるみの28歳なんだぁー。


 私は最後の悪あがきに、足を踏ん張って見た。

 しかし、元来持っているはずの異世界の力が、なぜか恥ずかしさに負け、発揮出来なかった。


 なんで、こんなことになる。


 絶対に、いやだぁー。

 心の中で絶唱した。


 王子はそんな私の繊細な心にはまったく気づかず、音楽に乗って、足を踏み出すと、踊り出した。


 止めてくれぇー。

 誰かぁ・・・。


 私の心に反して、音楽が鳴り出すと、体は勝手に、踊り出した。


 うそだぁー。

 いやだぁー。

 恥ずかしく、死ぬぅ。


 私の苦悩は、音楽が鳴りやむまで、続いた。


 アンドリュー王子は、音楽に乗って動く私を、ほの暗い、薄ら笑いのような笑顔で、ずっと見つめていた。


 おい、てめえのせいで、私は近年まれに見る、超恥ずかしい思いをしているんだ。

 早く、そのニヤケ面を止めて、何とかしろ!

 私は、そんな思いを込めて、アンドリュー王子を、真っ赤な顔で、睨みつけた。

「クロコ。そんな可愛い顔で、こっちを見ないでくれ。我慢できなくなるじゃないか?」

 アンドリューは、私の耳元で、そんなことを囁いた。


 可愛い顔だと!

 これは恥ずかしいさで、死にそうな顔だ、ボケェー!


 曲が終わろうとしたところで、またグイッと腰を引き寄せられた。

 見ると、そこにはホークがいた。


「アンドリュー王子、もうこの辺に、して下さい。」

 アンドリューは、かなり不服そうにしながらも、私から手を離した。


 私はホッと肩の力を抜いた。

 この腹黒宰相もたまには、役に立つ。


 えらい、ホーク。

 良く断ってくれた。


 思いのほか、真っ赤な顔で、ホークを見た。

 彼はプイッと、顔を横に向けると、私の腰を抱いたまま、壁際に向かってくれた。


 よし、グッショブだ、ホーク。


 私がそう思っていると、ホークがまた耳元に囁いた。

「なんで、あんな恥じらう顔で、踊っていたんだ。それに何を話した。」

 ホークはそう言うと、私の腰に回している手に、さらに力を込めて、グッと体を密着させた。


 恥ずかしい顔が、恥じらう顔に、見えたっていうの。

 おい、てめえらの目は節穴か?

 あれが、どうして、そう見える。

 もう一遍、眼科で見てもらえ!

 こっちに、眼科あるか、わからないけど・・・。


 私は好き勝手なことをほざく、お偉いさんたちに、怒りのままに死しそうになった。

 やっぱり、この舞踏会会場から、抜け出さなくては!


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