72.王宮の舞踏会
ホークが現れ、持ってましたと気合を入れていた文句が、結局、魅惑の貴公子の前に、脆くも崩れ去った。
なんでこんなに、無駄にキラキラしてるの、こいつ!
くそっ。
日本では、見ない美麗な顔に思わず見とれ、最後は文句も言えずに終わるなんて。
情けなくて、くやしいぃー。
私がそんなことを考えているうちに、事態は動いていた。
スズとクリス、それにマナとグリムのペアは、メリルに促され、公爵家の馬車で、王宮に向かった。
私は、結局、彼らをルドルフと共に見送った後、いつの間にか隣に来ていたホークに腰を抱かれて、公爵家にあるホークの私室に案内された。
「では、行ってらっしゃいませ、ホーク様。」
ルドルフが私室の扉の前で、一礼する。
「後は、頼む。」
ホークはそう言うと、私を部屋の中に、招き入れた。
中は、重厚な家具と、窓際にどっしりした机が置かれていた。
豪華というよりは、実質剛健な感じの部屋だ。
私は、家具類にばかりに気をとられ、部屋の真ん中に、浮かび上がっていた光る模様に気がつかなかった。
ホークは、私の腰をガッチリホールドすると、そのまま、その光る模様に、私を引きずり込んだ。
一瞬、フワッとした感じがし、すぐに収まる。
目を開けると、周囲が戦場に行く前に訪れた、王宮にある宰相執務室に変わっていた。
そこに、ちょうどノックの音が響いた。
「入れ。」
ホークの言葉に、侍従が扉を開けて入ってきた。
「お時間です。」
「わかった。」
そう言うと、ホークは私の腰を掴んだまま、歩き出した。
通路に出ると、そこには侍従の他に、王都守備隊の服ではなく、近衛隊の正装を身に着けた、シルバーとブランがいた。
なんで二人が、近衛隊の服を着て、ここにいるの?
私は疑問顔で二人を見ると、侍従は時間がないのか、先に立って歩き出した。
私は何も言えないまま、前後をシルバーとブラン、壁とは反対側をホークに囲まれながら、通路を進んだ。
長い通路に少し飽きて来た頃、侍従が豪華な扉の前に止まった。
扉の前に立つ、ホークに気がつくと、槍を構えた兵士が一礼して、扉を開けてくれた。
彼に腰を抱かれながら、私は中に入った。
そこは、きらびやかな光るクリスタルが、天井からさがり、豪華な装飾が周囲を飾る、舞踏会会場だった。
当然、周囲には、色とりどりのドレスに身を包んだ貴婦人と、それをエスコートする紳士が、そこかしこで、ざわざわと雑談していた。
そんな彼らが、一瞬ホークを見、次に彼にエスコートされている私を見た。
彼らの目が、私の全身を這い回る。
げっ、何、このイヤーな目線。
そこに、さっきとは違う扉が開いて、馬車で王宮に向かったスズとクリス、それにマナとグリムが現れた。
一瞬にして、騒めいていた人間の視線が彼らを捉えた。
「まあ、公爵様たちよ・・・。」
ザワザワと周囲が話し出す。
そこに、さらに敵国の第一王子と少し遅れて、現国王一家が、それぞれの扉から現れた。




