70思惑
ホークは、終結後、大国から来た交渉役と話し合い、自国にとって、かなり優位な和平条約を無事に、結ぶことが出来た。
ホッと肩の力を抜いた後、国境の砦を後にして、王宮に戻ることにした。
手っ取り早く、魔法で転移することも可能だが、別段、急いでいるわけでもない。
王都に戻ってから、やることといえば、和平条約終結の証に、王城で開かれる、夜の舞踏会に出席させられるくらいのものだ。
あまり気乗りしないが、これも仕事だ。
出席するしかない。
彼は結局、気乗りしないこともあり、馬で帰ることにした。
そこで、砦の厩に行ったら、王都に戻ろうとしていた、南門のチャゲとその部下たちとたまたま一緒になる。
なんとなく、流れで、一緒に戻ることになった。
「いやー、宰相様のマラカナイト製の大砲のお蔭で、思った以上に、早く終結出来ました。ありがとうございます。」
馬上で、チャゲがホークに、話しかけてきた。
「いや、それは君たちが、戦場で期待以上に、活躍してくれたからさ。おかげで、本当に絶妙なタイミングに、あれを投入できたよ。」
「そう言って、もらえると、嬉しいですね。ですが、左翼側の戦況は、あのチビッ子の活躍で、持ち直したようなもんですからな。その分は、あのチビッ子の手柄ですな。流石、伝説の英雄、ルドルフ様のお弟子様だ。」
チャゲはそう言うと、おおらかに笑った。
ホークは、チャゲに言われて、黒子にかけた呪文の事を思い出した。
ホークは、最終決戦前に、国境の砦に、マラカナイト製の大砲を、魔法が使えるものを総動員して多量に、転移で運び込んだ。
それもかなりの量だったので、彼自身も魔力を多量に使うことになった。
そんなこんなで、疲労困憊していた時に、シルバーから黒子のことを、戦場から外したいと言われたのだ。
まがりなりにも、戦場は初めてでも、ルドルフに匹敵する力を、黒子は持っていた。
それでは、戦力低下となってしまう。
そうなると、背後から敵の攪乱を頼んでいるルドルフを、マナの下に戻すことになる。
考えた末に、シルバーには、その事を了承し、それを将軍に、ホークから伝えると話した。
逆に今回の作戦の総指揮をとる将軍であるマナには、今の作戦のままで行くと、黒子を外すことを話さなかったのだ。
そして、本陣が出発した後、黒子に呪文を掛けて、戦場に向かわせた。
恐怖心と道徳心を呪文で一時的に喪失した黒子は、戦場で大活躍して見せた。
ホークとしては、結果オーライだが、黒子はどう思っているかは、推して知るべしだろう。
それにしても、今まで一度として、人を利用して、その利用した人物の事を考えたこともなかったのに、なんで黒子のことは気になるんだろうか。
ホークは、チャゲと話をしながら、ふとそんな事を考えていた。




