69影の支配者
私たちは、王都の大通りを練り歩いた後、王宮についた。
王宮では、きれいな流れるような銀髪で、印象的な緑色の瞳をした、美麗な顔の王が待っていた。
マナが代表して、王の前に進み出て、労いと賞賛の言葉を受ける。
さすが、ホークの異母兄だ。
男にしては、美麗な顔もがっしりした体型、印象的な潤んだ緑色の瞳も、本当によく似ている。
私は、長々した肩っ苦しい話が面倒で、適当にそんなことを考えながら、聞き流していた。
と、いきなり隣にいたシルバーに、脇を小突かれた。
「なにボケーとしているのよ。呼ばれたわよ、チビッ子。早く王の前に、行きなさい。」
なんで私が、王の前に行くの?
「いいから、ほら。」
私はシルバーに促され、王の前に進み出た。
王は隣にいた侍従から長い箱を受け取ると、それを私に差し出した。
私は分からないながらも、頭を低くして、それを受け取った。
周囲の雰囲気から、これは、たぶん褒賞なんだろう。
でも、貰っていいのかな。
そんな事を考えながらも、受け取った。
王はその後も、何人かに、同じような箱を渡すと、やっと式典らしきものが、終わった。
どうやらこれで、解散のようだ。
私は、シルバーの後について、厩に戻ると、来た時と同じように、彼に馬の手綱を持って貰った。
ちょうど、厩に馬屋番がいたので、手伝ってもらって、馬に乗せてもらうと、褒賞品を抱えながら、王宮の門を出ると、砦に帰った。
砦には、ブラン達も、すでに戻ってきているみたいで、それぞれ軽い訓練を終えた後、みんなは食事を始めていた。
私は、シルバーと一緒に、隊長室に戻った。
隊長室では、ブランが気をきかせて、二人分の食事を用意して、待っていてくれた。
「お疲れ様です。」
「あら、気が利くわね、ブラン。」
「一応、隊長のお陰で、俺はあのハデハデな行進の参加を免れましたから、これはそのお返しです。」
ブランは、そう言って、隊長の前に食事を出すと、お茶を入れに別室に向かった。
なにそれ、参加しなくてもいい方法があったの?
私がそう思って、シルバーを見ると、彼は食事に手を付けながら、一言ダメ出しした。
「チビッ子は無理よ。あんなに戦場で目立ったんだから、不参加になるわけないでしょ。」
「別に目立ちたくて、目立ったわけじゃないけど・・・。」
そう言えば、ホークは王都にもどって来たのだろうか?
私の考えを読み取ったらしい、シルバーが食事をしながら、教えてくれた。
「宰相なら、今日の王城で開かれる舞踏会には、参加するそうよ。」
舞踏会ね。
そこで捕まえられても、その会場じゃ、文句は言えないし。
かといって、このまま、なし崩しはくやしいし。
なんか、いい方法は、ないものかなぁ。
いったい、どうしたものか。
私は、北門の砦にある隊長室で、そんなことをのんびり考えていた。
その頃、公爵家では、公爵夫人がメイド長のメリルを巻き込んで、今夜の舞踏会に向け、ドレスを試案していた。
「ねえ、メリル。どっちのドレスが、黒子に似合うかしら?」
「今夜の舞踏会には、隣国の第一王太子のアンドリュー様も来られるのに、いいんですか。奥様。あの王太子の趣味は、先王と同じで、強い女ですよ。」
スズは、黒子の似合いそうなドレスを、手にしながら、にこやかにほほ笑んだ。
「かえってその方が、面白いわ。人間、捕られると思うほど必死になるものだし、それこそ、恋のスパイスよ。」
メリルは、大きな溜息をついた。
「奥様、遊んでいませんか?」
「まあ、そんなわけないじゃーない。ただ孫には、いつまでも、いい男で、いて貰いたいっていう、祖母の欲目は、ありますよ。」
いやいや奥様。
それは、欲目じゃなく。
ただ単に、楽しく孫を使って、遊んでいるだけだから。
そうメリルは、叫びたかったが、懸命にもその心の声は封印した。
下手にそんなことを言おうものなら、矛先が自分に向かないとも限らない。
メリルは、自分の保身を考えて、今回のことは、本人にも夫にも、何も言わなかった。




