64マラカナイト製の大砲
「うーん、うるさい。」
私は、翌朝、広場のガヤガヤ声に、叩き起こされた。
素早くベッドを出て、着替えると、突き当りの廊下の窓から、広場を見下ろした。
そこには、金色に光る巨大な大砲が、いくつも並んで、鎮座していた。
兵士は、それを荷車に乗せ、引き馬につないでいる。
それが何十台もあって、なんとも圧巻な姿だ。
「あら、今日は後方支援なのに、早いのね。」
私の後ろから、シルバーが声を掛けてきた。
「おはようございます。もう、出陣ですか?」
何を思ったのか、シルバーは、私の頭を撫でまわすと、最後に、ポンポンと叩くと、何も言わずに、そのまま通路を、歩いて行ってしまった。
今のはどういう意味、なんだろうか?
私がぼやぁーと考えていると、広場のガヤガヤがなくなり、そこに、チャゲとシルバー、それに将軍のマナと副将軍のグリムの姿が現れた。
彼らは、兵士に声をかけると、砦の門から一斉に、国境に向け、進軍して行った。
しかし、広場を見下ろすと、まだあの巨大な大砲が、そのままそこに、残されていた。
今日の戦闘では、使用しないのだろうか?
私がそう考えていると、急に背中から声がかかった。
「ここにいたのか、黒子。」
後を見ると、いつの間にか、そこには腹黒宰相ことホークが立っていた。
「忘れ物だ。」
ホークは私に、リュックを放り投げた。
私は受け取った途端、リュック入れておいたマラカナイトの事を思い出した。
思いっきり、忘れてた。
慌てて、リュックの中を確認するも、そこには、一袋のマラカナイトも残っていなかった。
「ままま・・・マラカナイト・・・ない。」
私は、物凄い勢いで、目の前に立っている、ホークを睨んだ。
「そのリュックに入っていたマラカナイトなら、あの大砲とこれから放たれる砲弾に、使われているよ。おかげで、大量の武器を作ることができた。」
ホークは、かなり満足顔だ。
私は、逆に、大変不満顔で、ホークに喰ってかかった。
「なんで、私の許可なく、勝手にリュックを漁って、なおかつ、その中に入っていたマラカナイトを、持ち主の許可なく使ったの?」
「私の執務室に、何日も放って置かれたものだ。まさか、持ち主がいるとは、思わなかったんだ。」
口の端をちょっとニヤつかせて、そう説明する。
こいつ、今さらっと、すっとぼけたな。
確信犯か!
信じられない。
でも、どうして、そんなことを、わざわざ私に言う必要があるのか。
それでもって、なんで、今更、私にリュックを返したの?
今度は、どんな裏があるっていうの?
私はジトーとホークを見た。
ホークは、私の背中越しに、窓枠に両手をつくと、広場を見ながら、ぼそりと耳元で呟いた。
「使わなかった砲弾の分は、正規の値段で換算して、現金で返そうか?」
なにー、今、なんといったんだ、こいつは。
現金で返すって、どういう意味?
「そうだな、砲弾一個は、公爵家の屋敷一個分の価値があるから、残る砲弾の数によって・・・。」
あの砲弾一個が、屋敷一個に相当するの!
なら、砲弾が放たれる状況は、どんな時・・・。
私の頭の中が、急激に計算を始めた。
戦況が悪いときよね。
なら戦況が良ければ、砲弾は使われないはず。
私は、ビシッと指をホークに、突き付けて宣言した。
「絶対、残った砲弾の分は、払いなさいよ。」
私は、そう叫ぶと、勢いよく部屋に駆け戻って、剣を持つと、広場に向かって、階段を駆け降りていた。




