63将軍
私の叫び声が、天に届いたのかどうか、不確かだが、その瞬間、砦の方から、勇ましい騎馬の足音が、響いてきた。
援軍だぁー!
将軍様が来られたぞぉー!
あちらこちらから、本陣到着の声が、聞こえてきた。
途端、敵陣はアッと言う間に、後退していった。
助かった。
死ぬかと思った。
私が呆けていると、いつの間にか、ブランと隊長のシルバーが、傍に来てくれた。
ブランが手を貸して、部下にパキの搬送を頼んでくれた。
その後、ブランは、私を乗せようとしてくれたようだが、私はそれを断った。
まだ、このくらいの距離なら、徒歩の方がよっぽど早い。
乗馬はもう、こりごりだ。
馬に乗ったシルバーとブランの横を、私は速歩で並んで走ると、砦に戻った。
ちなみに、私の走りを隣で見ていた二人の目は、なぜか真ん丸になっていた。
そんなに、呆れるようなことなのだろうか。
密かに、私は、心の中で反論した。
砦に着くと、そこには、マナ将軍と副将のグリムが、忙しなく動いて、兵に指示を飛ばしていた。
シルバーとブラン、それにチャゲが、戦況報告に、将軍の所に行ったので、私はケガで担ぎ込まれたはずの、パキの様子を見に、救護所に向かった。
テント内は、まさに戦場のようだった。
あまりの人に、一瞬、引き返そうとしたところに、リボンが声をかけてくれた。
「黒子ちゃん、こっちよ。」
見ると、リボンが手を振ってくれている。
私は、人を避けながら、そっちに向かった。
「黒子ちゃん、怪我はなかった?」
「はい、大丈夫です。あのーパキ・・・。」
私がパキの居場所を聞こうとしていると、彼女は隣のベッドを指した。
見ると、足に添え木と包帯を巻かれたパキが、ぐっすり眠っていた。
私が心配そうにみていたので、隣にいたリボンが容体を説明してくれた。
「大丈夫よ。命に、別状はないわ。ただ、足の骨が折れているから、くっ付くまで、絶対安静って所かしら。」
私は、リボンの言葉に、ホッと肩の力を抜いた。
彼女は私の様子に、肩に手を置くと、優しく言葉を掛けてくれた。
「今日は、疲れたでしょ。食事が用意されているから、早く食べに行きなさい。」
私は、リボンの言葉に、自分がかなり空腹だったことに気がついた。
随分気が張っていたようだ。
私はすぐにテントを出て、砦の兵士が大勢いる、食堂に向かった。
食堂に着くと、また誰かに手を振られた。
近づいていくと、ブランが夕食を食べていれるところだった。
見ると、気が利くことに、そこにはもう一人分の食事が用意されていた。
思わず、お礼を言って、すぐに、食事に手を付けた。
私が食事をしている横で、ブランは明日の戦闘は、午後からだと教えてくれた。
「あっ、それと黒子ちゃんは、後方支援ね。」
「後方支援? それって、なんでしょう。」
ブランは、苦笑いして教えてくれた。
「まっ、要は直接戦いに出なくって、いいってこと。黒子ちゃん血を見て、体動かなくなってたでしょ。あれだと返って、足手まといだからって、隊長が。本心は、心配してるだけだけどね。」
ブランの言葉に、私は涙が出そうになった。
本当は、明日の戦いが、怖くて、怖くて、しょうがなかったのだ。
「ありがとう、ございます。」
私は、思わず、スプーンを持ったまま、その場で涙ぐんでしまった。
その日は、ブランと食事をした後、ベッドに直行すると、そのまま、眠ってしまった。




