60国境の砦
呆けている私を見つけたパキが、手を引っ張って、シルバーの所に、連れて行ってくれた。
「やっと来たわね、チビッ子。遅いわよ。さあ、さっさとその馬に乗りなさい。」
私は、我に返って、乗れと言われた馬を見た。
そこには、きれいに黒い艶々の毛を逆立てて、鼻息荒く、前足を地面にかく、地球で言うサラブレッド様がいた。
うま・・・ウマ・・・馬・・・。
私の目は、大きく見開かれた。
「うまぁー!」
馬は、私の声にビクリとして、こちらを睨みつけた。
「何よ。こんなにいい馬なのに、まさか気に入らないの?」
シルバーは呆れたように、目をグルっと、回して見せる。
私は、馬を見つめながら、ぼそりと言った。
「乗れません。」
「はっ?」
シルバーは、髪を搔き上げながら、もう一度私を見た。
「乗ったことがありません。」
「・・・。」
シルバーは、信じられないものを見る目で、私を見つめた。
「乗ったことがないの!」
私は素直に頷いた。
「一度も!」
私は、もう一度、頷いた。
「流石、非常識娘ね。」
シルバーが私の全身を眺めまわし、次に、ブランとパキを見た。
すぐに決心したように、目がパキを見た。
「パキ、馬には乗れる。」
パキは目を丸くして、頷いた。
「じゃ、その馬にチビッ子と一緒に、乗りなさい!」
パキが固まっている。
少しすると解凍したようで、シルバーに、詰め寄っていた。
「俺、歩兵なんですけど。」
「あなたは、今から黒子の従者よ。」
シルバーの一言で、結局黒子の後ろにパキが座ることで、隊列が整えられ、それからすぐに出発した。
その後、シルバーが率いる北門の軍とチャゲが率いる南門の軍が、国境近くの砦に向かった。
距離が離れているため、かなりの時間を馬で進軍した後、やっと到着することができた。
「うっ、尻が・・・。」
パキの手で、私はお尻を抱えながら、やっと馬から降ろしてもらった。
二度と馬になんか絶対乗らない!
私は、馬の顔を眺めながら、固く決意した。
私たちが着いた少し後に、チャゲの奥さんがいる医療部隊や食料を束ねる補給部隊も、二軍に守られながら、砦の中に入ってきた。
ふと、見ると、私と目があったリボンが、しきりにこちらに手を振っている。
すぐ隣で馬に乗っていたシルバーと後続から砦に入って来たチャゲの両隊長は、国境の砦に入ると、すぐに国境を警戒しながらも、今後の部隊編成の確認会議に入った。
明日には、王都から将軍とルドルフ、それに後続の部隊が到着する。
今日は、まだ国境に敵の姿は見えなかった。
なんとか、間に合ったようだ。
私は、嫌々ながらも、案内された部屋で、傷むお尻をさすりながら、眠りについた。




