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58狙われた獲物

 夜遅く、隊長室で必死に仕事をしていたら、突然、公爵夫人が転移魔法で、部屋に現れた。

 流石のシルバーもあまりのことに、ペンを持ったまま唖然とした。

 シルバーは、頭の片隅で、ここは主要な砦なので、強固な転移魔法制御の結界が、張ってあったはず・・・あれ?


 公爵夫人は、そんなシルバーの様子を無視すると、記憶を見た黒子の様子を単刀直入に聞いてきた。

「それで、黒子の感想は、何と?」

「すごい。」

「えっ。」

 公爵夫人の間抜け面という、世にも奇妙なものを見れたが、彼女はすぐに、我に返ると、もう一度、確認してきた。

「それだけ?」

「はい、それだけです。その後は、記憶クリスタルの方に、興味がいったようで、そっちの質問ばかりでした。」


 公爵夫人は、そこで帰ろうとしたので、シルバーはその背に、一言付け加えた。

「もう一つ感想を言ってましたよ。」

 公爵夫人は、振り返って、”坊や、私を誰だと思っているのかしら”と言う顔で睨み付けてきたが、シルバーは気にせず、話始めた。


「あんな映像を残して、プライバシーは、大丈夫かと聞いてきました。」

「まあぁ!」

 公爵夫人は、うれしそうに、シルバーの報告を聞くと、魔法陣を展開して、物騒な一言を残して、隊長室から消えた。


 ”さすが、未来の孫の嫁は、最高ね!”


 チビッ子、かんばりなさいよ。

 じゃないと、すぐに公爵夫人に、身動き出来ない様に、外堀から埋められて、がんじがらめにされ、気がついたら、チビッ子が公爵夫人になってるわよ。


 シルバーは、黒髪のチビッ子を、少しばかり憐れんだが、直ぐに目の前に山と積まれた書類に、思考を現実に連れ戻された。

 その日の隊長室は、朝方まで、明かりがついていた。


 一方、隊長室でかわされた、物騒な会話を知らない私は、いつものルドルフ作ではない、夕食を食べて、温泉につかり、のんびりしていた。


 そう言えば、あの本を見たけど、なんであれで、隣国と戦争になるのか、その後の説明を、全く聞いていなかったっけ。

 まっ、いいか。


 明日もどうせ、砦だし、明日聞こう!


 私はそう考えて、温泉を上げると、部屋に戻って、早々と寝てしまった。

 次の朝、砦に行ってから、それを非常に後悔した。

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