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55一度あることは、二度ある。

 王妃が懸念した通り、三か月後に、アンジェリーナの実家から知らせが王宮に届いた。

「陛下!」

 侍従が王の執務室に、駈け込んで来た。

 王妃がそれ見たことかと、王を見た。

 マナの時とは違って、何とも言えない顔で、王は王宮から迎えの馬車を出した。


 結局、その日の夕方には、側妃として、アンジェリーナは、王宮に戻ってきた。

 王も彼女のお腹に子供がいる状態では、無視も出来ず。


 侍医の側妃様のお腹の子の為にも、三日に一度は、彼女の部屋を尋ねてほしいという要望の通り、昼食を彼女の部屋で一緒に取るようにした。


 それとは反対に、せっかく少しずつ、警戒心を緩めて話せるようになったマナからは、仕事が忙しいのでと言われ、ここ最近、無視されっぱなしだ。


 王は、悶々としながらも、何とか日々の執務をこなし、側妃の出産の日を迎えた。

 周囲も側妃自身も男の子だと思っていたようだが、それに反して、生まれたのは姫だった。


「そんな、うそよ。私の家系は、最初に生まれるのは、今まで、男ばかりだったのに、・・・。」

 出産を境に、側妃であった彼女の心は、徐々に病んでいった。

 生んだ子供の養育はせず、日々部屋に籠ってばかりいた。


 そんなある日、マナの生んだ子供が、将軍である祖父に連れられ、王宮を訪れた。

 この国の貴族の後継者指名は、五歳から行える。

 その”後継の儀”の為に、将軍は孫とその母親であるマナ、そして将軍の妻であり、少年の祖母である二人を伴なって、登城した。


 現宰相と王、それに王妃が見守る中、きれいな銀髪と美しい緑色の瞳を持つ少年が、玉座の間で、書類に署名した。


 書類は宰相の手に渡され、国の公的機関で保管される。

 無事終了し、全員がホッとした所に、いきなり後部のドアから、側妃が飛び込んで来た。


 みんなの視線が、一斉に側妃に向けられた。


 誰も動けないのをいいことに、側妃は、王を通り越し、少年に走り寄ると、隠し持っていたナイフを彼の喉元にあてた。


 周囲の兵が王の前から、事態に気づいて、動こうとしたが、少年の喉元に、ナイフが突きつけられていて動けない。


「ナイフを捨てろ!」

 側妃は真っ青な顔で叫ぶ王を、狂喜の目で見ると、にこりと笑った。


「大丈夫です。陛下。この子が亡くなれば、また私が男の子を生みますわ。」

 側妃はその一言を呟くと、剣を振り上げた。


「殺すな!」

 マナの悲痛な叫び声が、玉座の間に木霊した。


 途端、側妃は振り下ろしたナイフごと、空中に放り出された。

 気がついた祖父が、固い床に叩きつかられる前に、側妃を受け止める。


「母上。あの状態で、難しい注文は困ります。」

「すまない。だがホーク、お前も悪いんだぞ。なんで、むざむざナイフを喉元に、突き付けられているんだ。」

 母と子の、このやりとりに、公爵家以外の面々は、唖然としていた。


 少年は、小さな肩を竦めると、弁解した。

「普通狙うなら、王でしょ。一度も会ったことのないご婦人が、俺を狙うとは、思わなかったんです。」

「油断だな。」

 母親の指摘に、少年は目を大きく見開くと、諦めたような顔で返答をした。

「今後は、もっと気を付けます。」


 将軍に受け止められた側妃が目を覚ました。

「なんで、私は・・・?」

 手に握られていたはずのナイフを捜す。


「私の息子はルドルフの弟子だ。女の手で如何こうされるほど、弱くない。」

 マナは、そう言うと、親友の顔を見た。

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