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54アンジェリーナのたくらみ

 アンジェリーナは、王宮を去る前日、王に目通りを願い出た。

 流石の王も、五年も会わなかったのが、良心に響いたようで、彼女の提案を受け入れてくれた。


 執務が終わった夕方、王は執務室を後にして、それぞれの側室の元を訪れた。


 アンジェリーナは、かねてから用意してあった媚薬入りのワインを、言葉巧みに王に勧める。

 最初は固辞していた王だが、彼女しか知らないマナの若い頃の話をすると、ワインを素直に飲んでくれた。

 話が弾むほど、王も酔いと媚薬が回って、酩酊してくる。


 それを見計らって、彼女は王を、寝室に引き入れた。

「マナ・・・。」

 王の口から、彼女の親友の名前が呟かれる。

 途端、彼女の中で、燻っていた仄かな嫉妬心は、黒い炎を上げて大きくなった。


 彼女は媚薬を盛った王に、マナとして抱かれた。

 王の手が身体中を這い回り、熱く親友の名を告げる。


 彼女は嫉妬に身を焦がしながら、朝方まで王に抱かれ続けた。


 朝方、目を覚ました王は、唖然として、腕の中の女を見た。

「なぜお前が、ここにいる?」

「陛下が朝まで、離してくれなかったからですわ。」

「なんだと。」

 王は、怒気を抑えながら、怠い体を引き上げると、傍にあったガウンを羽織り、側妃の寝室を後にした。


 昼頃、彼女の部屋に、侍従が現れ、王宮を去るように促された。

「なんですって。私は昨晩、王に抱かれたわ。それなのに、王は私に出て行けというの?」

「私は、ただ単に議会の決まり事を伝えるだけですので。」

 彼女は、口をひとしきり侍従を罵ると、迎えに来た伯爵家の者たちに連れられて、王宮を去っていった。


 王は執務室で、侍従の報告を受けた。

「お二方とも、無事にご実家の方に、お帰りになられました。」

「そうか、ご苦労だったな。」

 王は侍従にそういうと、下がらせた。


 侍従が下がると同時に、王妃が執務室に入ってきた。

 いきなり、王の顔を見ると、昨晩の出来事について、追及された。

「なぜ、お二人とも帰らせたのですか?」

「それは・・・。」

 王は執務室の窓外を見ながら、言いごもった。

 窓外には、軍の訓練様子がよく見える。

 その中でも、真紅のマントを羽織ったかの人が鮮やかな動きで、部下の剣を飛ばしていた。


「聞いていらっしゃるのですか、陛下?」

「ああ、聞いている。」

 王は返事をしながらも、相変わらず窓外を見ていた。

「もし、彼女が妊娠していたら、どうするんですか?」

 王は苦虫を噛み潰した顔で唸った。

「その時は・・・、側妃として、もう一度、王宮に呼び戻す。」

「彼女の婚約者が、だれか、わかって、言っているんですか?」

「何、どういうことだ?」


 王妃は、扇で口元を隠すと、大きなため息をついた。

「かのものの婚約予定者は、ヘンリー伯爵ですわ。」


「なんだと。マナの元、婚約者じゃないか。」

 王の顔は、なんでそんな奴を、議会は相手に選んだんだ思った。


「そうですわ。もし、彼女が妊娠していれば、あなたは二度も、ヘンリー伯爵の婚約者を寝取ったことに、なりますわね。」

 王妃は、そう言うと、今度は執務室で、呆然としている王を、その場に残して、去っていった。

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