49秘湯
マナは、王の腕の中で目を覚ました。
軋む体に鞭打って、起き上がろうとしたら、王に抱き締められた。
「離せ!」
「いやだ。私はマナを愛しているんだ。」
マナは、王の顔を平手で叩いた。
パッシーン!
王が呆然とその場で頬を抑える。
良い所で画面が止まった。
コマーシャルじゃないんだから、普通ここで画面止まる。
私はぶつくさ言いながら、本を次のページにした。
マナが床に散らばった服を拾うと、すぐ隣にあった浴室に消えた。
マナは浴室の傍の棚に騎士服を放ると、シャワーを出す。
そのまま、シャワーに入ると、声を殺して泣いた。
そりゃ、そうだ。
私が画面を見ていると、マナはシャワーを止めて、服を着ると、浴室から出た。
そして、まだベッドにいる王をその場に残すと、バタンと扉を閉めて、部屋を出て行った。
王は何も声をかけることが出来ず、それをただ見送った。
一行は、伯爵家で朝食をいただいた後、王都に向かった。
王都の民衆が熱狂的に一行を歓迎した。
特にマナの”敵国王捕縛の知らせ”は、いつのまにか王都で有名になっていて、それこそ英雄のように賞賛された。
彼女は、熱狂する民衆の声に、馬上から手を振って、応えた。
王はそんな彼女を後ろから、ただ黙って見ていた。
王宮に着くと王妃と彼の側室二人が出迎えてくれた。
マナは王妃に挨拶をすると、疲れを理由に、すぐに王宮を後にした。
馬で屋敷に戻ると、公爵夫人である母とメイド長が出迎えてくれた。
「お母様!」
マナは、母に抱き付いた。
母は抱き付いてきたマナにビックリしながらも、彼女の頭を優しく撫でてくれた。
「何かあったの?」
母の問いに、マナはただ黙って、首を振り続けた。
次の日、昼頃に目が覚めると食事もそこそこに、メリルに促され、なぜか馬車に乗っていた。
馬車の中には、母が座っていて、マナを乗せると、扉近くにメリルが据わると馬車が動き出した。
「お母様?」
母はただ笑って何も言わない。
「あのー、どちらに行くのでしょうか?」
「秘湯よ。」
「ひとうですか?」
「ええ、私とメリルだけしか知らない場所よ。もちろん、あの人もルドルフも知らないわ。」
二人が知らない場所。
でもなんで今?
「まっ、ついて来ればわかるから、心配ないわ。ねえ、メリル。」
メリルは母の言葉にただ黙って頷いた。
頷いてから、ハッとした。
しまった。
王宮に連絡しなければ・・・。
マナの心配顔見て、母がぼそりと呟いた。
「王妃に休暇申請をしといたから、大丈夫よ。」
王妃に休暇申請?
休暇申請なら王にするのでは?
マナは疑問符を浮かべながら、母の顔を見て、馬車の外に目を移した。
外の景色はいつのまにか、街から樹木にかわり、地面も石畳から土に変わっていた。
マナは馬車の窓から、緑を見ながら、ぼんやりとした。




