46敵の大将
また画面が止まったので、私は本を次のページにした。
画面は敵の緋色のマントを付けた大将をクローズアップした。
かなりがっした巨体に、しっかり日焼けした太い腕には、今、マナが斬りつけた傷から止め処なく、血が流れ出ていた。
マナはそんな敵の大将の首元に、剣を突き付けながら、敵の本陣を抜け、砦に向かう。
敵からの攻撃は、よほどこの大将が大事なようで、ピタリと止まった。
多少抵抗があるものと思っていたが、全く敵からの抵抗がなかった。
拍子抜けするほどだ。
マナは、大将の首に剣を突きつけたまま、砦までゆっくりと移動していった。
ルドルフと味方の兵士が、その周囲を取り囲み、同じように動いていく。
亀のような歩みで、何とか暗くなる前に、味方がいる砦の中に、大将を連れ込んだ。
砦の中に入った途端に、中にいた隊長がマナたちの所に駆け寄ってきた。
そして、男の顔を見た途端、硬直した。
「隊長。この大将が何者か知っていたんですか?」
隊長は、ごくりと生唾を飲み込んでから、その敵の大将の真実の姿を教えてくれた。
「その方は、敵国の王様です。」
「えっ、おうさま・・・。」
マナは自分が捉えた相手を見た。
浅黒き肌に茶い髪、顔はがっしり系のいい男だ。
確かにちょっと捕まえた時、どこかで見たような顔だと思わなくもなかったが、まさか敵国の王様だとは思わなかった。
道理で兵士たちが、遠巻きにしたまま、こちらに手出ししてこないはずだ。
さて、この男をどうしたものか?
マナは、取り敢えず、将軍である父が駆けつけてくるまで、ひたすら待つことにした。
もちろん虜囚にした敵国の王様を丁寧にもてなしながら・・・。
まったく、なんだって、こんなことになっているのだろうか?
マナは、結局、女性がこの砦にいなかったため、王様の世話は、彼女が担当することになった。
一応、現状がこうなってしまったことは、父に伝言鳩を使って、先程連絡した。
しかしながら、父からはまだ連絡が来ない。
はぁー
マナが溜息をつくと、敵国の王様が目ざとく見つけて、声をかけたて来る。
「どうした、マナ。食事が進んでいないようだが、これは、かなり美味しいぞ。これを作ったものを、是非わが城のお抱え料理人として、雇いたいのだが、どうだろうか?」
マナは王の声に、真実を告げた。
「これを作った人物は、公爵家のお抱え料理人なので、あなたには、渡せません。」
王は面白そうに、マナを見た。
「なら、あなたを私の妃に迎えよう。それなら問題なかろう。」
おいおい、この王様。
頭は大丈夫だろうか?
自分が今、捕虜だという自覚がないんじゃないか?
なんで、いきなり口説き始めるんだ?
それとも、これは、敵国の常識というものなのか?
マナは、顔を引き攣らせながら、相手の話を適当に聞いて、深々と溜息をついた。




