44国境
マナは、将軍である父から一個中隊を任されると、それを率いて、公爵家領地である国境の砦に向かった。
隣では、まだ正式ではないが、婚約者のヘンリーが馬を駆けている。
斥候に出していたものが、マナたちの元に戻ってきた。
「隊長。」
マナは隊を走らせながら、状況を聞いた。
砦はどうやら周囲を全て包囲されているようだ。
本陣も周到に高い崖を背に張られている。
みごとな布陣だ。
まさに付け入るスキがない。
「どうなさいますか、お嬢様。」
話を聞きながら、馬を走らせると、戦場のすぐ傍まで来ていた。
全員が一旦馬を止め、マナの指示を待つ。
ここに来るまでの父の指示は、戦場をかく乱して、父たちが駆けつけるまで、砦が落とされない様にすることだった。
でも、かく乱しようにも、ここまで砦を囲まれていては、攪乱自体が出来ない。
マナは、一緒について来てくれたルドルフを振り向いた。
「これでは攪乱し様にも攪乱できませんね。」
確かに正論だ。
攪乱しようがない。
いったい、どうしたものか。
マナは馬上で地図を広げた。
攪乱は思ってもいない方向から敵が現れない限り、攪乱にはならない。
思ってもいない方向とはどこだ。
砦の傍を流れている川から攻撃しようにも、こちら側では川下になり、川を登って、攻撃しようとした途端、発見されて、直ぐに反撃されしまうだろう。
いっそ、鳥にでもなって空から攻撃でも掛けられればいいが、そんな便利な魔法はない。
それなら山でも越えるか。
やま!
マナはもう一度地図を見た。
敵陣は切り立った崖の傍に布陣している。
もし崖から攻撃できれば、攪乱になる。
だがあの山を徒歩で登るのは出来なくないが、馬で上がるわけにいかない。
それに山の霊力が強すぎて、あの山には転移魔法は使えないのだ。
やるとしたら、徒歩で登って、命がけで崖を飛び下りるしかない。
運よく飛び降りる時、山より離れた距離を稼げれば、飛翔の魔法を使える。
だが、謝って崖に近づいた状態で飛び降りれば、それは自殺行為だ。
マナは意を決して、この案をルドルフと副隊長であるヘンリーに提案した。
ルドルフは賛成し、ヘンリーは青ざめた。
「無茶です。」
ルドルフを見ると、彼は頷いた。
「やれるんだな。」
ルドルフは無言で頷いた。
マナは、彼の答えに、人選も任せた。
「本当に、そんな離れ業をやるつもりですか?」
ヘンリーが隣から信じられないという顔で叫ぶ。
私は隣で叫ぶ、ヘンリーを無視して、ルドルフの人選を聞いた。
彼の人選は、全員ここの領地出身の者ばかり5人と本人だった。
「よし、わかった。じゃ行くぞ。後は頼むヘンリー。私たちが攻撃を開始したら、こっちからも仕掛けてくれ。」
「あなたも行くんですか?」
「もちろんだ。」
ヘンリーは唖然とした後、黙ると、頷いた。
私はこの全員を引きつれて、山を登った。




