43戦い
また画面が止まったので、私は本を次のページにした。
今度の画面は、どこかの豪華な寝室だった。
淡いクリスタルが照らされる中、背の高いがっしりした男が、寝台より起き上がる。
部屋から見える窓の外は、真っ暗だ。
「陛下?」
男は、女の呼びかけには、何も言わず、ベッド脇にあったガウンを羽織ると、部屋を出て行った。
「陛下・・・。」
ベッドから半身を起して、アンジェリーナは、男が去っていったドアを、熱い眼差しで見つめた。
王は、部屋を出ると執務室に向かった。
昨日届いた公爵家からの書類を持つと、自室に戻った。
その書類には、公爵家の長女であるマナと侯爵家の次男ヘンリーの婚約許可書だった。
王はサインをしようと、羽ペンを持つが、それをまた置くと、ベッド脇に置いてあったグラスにお酒を注ぐと、イッキに喉に流し込んだ。
アルコールが焼け付くように喉を通っていく。
「くそっ。」
最後はグラスを叩きつけるように、テーブルに置くと、書類をそのままにして、布団を被った。
画面が明るくなって、朝日が窓からさし込んで来る。
バタバタバタバタ
「陛下、失礼します。」
慌てた様子の侍従と宰相が、王の部屋に駆け込んで来た。
「どうしんたんだ。」
異様な雰囲気に、王はベッドから飛び起きた。
「大変です。国境付近で我が国の兵と隣国の兵が衝突しました。」
「なんだと、それは間違いないのか?」
宰相は、王の問いに、真剣な顔で頷いた。
王は起き上がると、着替えながら、宰相を振り返った。
「将軍は?」
「すでに、会議室にて、王をお待ちです。」
侍従が王に洋服の着替えを手伝うのを見ながら、宰相が隣から王の問いに答えた。
「分かった。今いく。」
王は、着替えを終えると、会議室に急いだ。
「待たせたな、将軍。」
そこには、舞踏会の時とは違い、白い鎧を着たままのクリス公爵が立っていた。
目の前には、国境付近の地図が開かれていて、戦況を確認しているところのようだ。
「状況は?」
「あまり、よくありません。」
見ると、自軍に対して、圧倒的に、隣国の兵数の方が多かった。
「こんなにいるのか。」
将軍は静かに頷いた。
「陛下、事後承諾で申し訳ありませんが、私の一存で、先程、国境に増援を向かわせました。」
「かまわん。でっ、誰がそれを指揮しているんだ?」
将軍は、刻々と入ってくる情報を紙に書き込みながら、それに答えた。
「はい、娘のマナに任せました。」
「公爵家の後継者を出したのか?」
王は、しばらく唖然となって声をだせなかった。
「はい、この砦は我が領地のすぐ傍です。地理を誰よりも適格に把握し、この状況をひっくり返せるのは、娘のマナだけですので・・・。」
将軍も苦渋の選択だったようで、顔色が悪い。
王は、かなりの間、呆然とした状態で呆けていたが、気力で顔上げると、そのまま将軍を見た。
「わかった。すぐに会議を招集して、私も出陣しよう。だが、今はすぐには何も出来ん。とりあえず、状況は逐一報告するように。」
将軍は、難しい顔で頷いた。




