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42マナと王

 軽く自分に礼をとるクリスを見ながら、王であるは、なぜか彼の隣にいる少女に心惹かれた。

 背が高く、すらりとした肢体に、きれいに結い上げられた茶色の髪が艶やかに光っている。


 王の目線に、クリスが仕方ないような、気の進まない声で娘を紹介した。

「一人娘のマナです。」

 マナは父に促され、ドレスをスッと引くと礼をとった。

 顔を上げて、真っ直ぐに王を見る。


 王はクリスの一人娘であるマナの黒い瞳に射すくめられた。

 目が離せなかった。

 溺れるように、その瞳をジッと見つめる。


 まったく、なにも言わない王に焦った王妃は、王の代わりに言葉をかけた。

「とても、珍しい瞳なのね。」

 マナはにこりと微笑むと、王妃の質問に答えた。


「私の自慢である祖父ゆずりの瞳です。」

「まあ、どちらのご出身かしら。」

 マナは、ニヤリとすると王妃の青い瞳を見ながら、答えた。


「はい、異世界出身でございます。」

「まあぁ!」

 王妃は嬉しそうに微笑むと、今度は、ぜひその話を聞かせてほしいと、王妃主催のお茶会に招待された。

 マナは、表面上は嬉しそうに微笑むと、お礼を言った。

 本心は、お茶会に出席しない言い訳を、頭を高速回転して考えているところだったのだが・・・。


 王は、まだマナを見ていたので、王妃に足を踏みつけられた。

 慌てて、我に返る。

「今宵は、ゆっくり楽しんでくれ。」

 王の言葉に、公爵はお礼を言うと、その場から下がった。


 王は去っていく公爵の娘を見つめていた。

 また王妃に足を踏みつけられた、我に返ると、次の貴族に目を移した。

 マナは、王に挨拶が終わると、両親と一緒に舞踏会会場の際に移動した。


 少しすると、王と王妃が踊りだし、舞踏会が始まる。

 王妃は、心ここにあらずの王に話しかけた。

「珍しいわね。あなたが我を忘れるなんて・・・。」

「・・・。」

 全く返答のない王に、王妃は笑みを浮かべると、耳元で囁いた。

「それじゃ、まるで恋する男みたいよ。」

「おい、なんてことをいうんだ。」

 王妃は、さっきの笑みを引っ込めると、真剣な顔で忠告した。

「一つ言っておくわ。あの娘は、公爵家の後継者よ。あなたの側室にはなれないわ。」

 王は、黙って王妃の言葉を受け止めた。

 分かっている。

 でも、目線は王妃を見ながら、心はあの娘を追っていた。

 悲しいかな。

 どうしても、その日の舞踏会では、この感情を制御することができなかった。


 マナは、舞踏会会場を両親と三人で踊りもせず、飲み歩いた。

 何と言っても王宮だけあって、銘酒が各種、取り揃えられていたのだ。

 母も最初は踊りなさいと言ってきたが、目の前に銘酒が運ばれてきて、飲み始めると、その後は何も言わなかった。

 父はすでに銘酒で、ほんのり赤くなっていた。

 まあ、父のクリスは、母ほどお酒に強くないので、赤くなった所で、量を控えているようだった。


 マナが、銘酒を飲みながら楽しんでいると、アンジェリーナが傍に走ってきた。

「マナ!ありがとう。約束を守ってくれて。」

 マナはアンジェリーナに微笑みかけた。

「いや、まあ。だが、おかげで、こんなに美味しいお酒にありつけたわけだから、かえってよかったよ。」

 アンジェリーナは、マナの言葉に、嬉しそうに微笑んでくれた。


「でも、よかったぁ。王様も王妃様もやさしそうな人で・・・。」

 アンジェリーナは、そう言って、遠くを見つめた。


 マナは、そんなさびしそうな彼女に、声をかけた。

「なにか心配ごとかい、アンジェ?」

「ううん、大丈夫。なんでもない。」

 アンジェリーナはそう言うと、舞踏会会場にいた両親の所に戻っていった。

 マナが心配そうに後姿を見送った翌日。


 王から二人の側室の名前が発表された。


 アンジェリーナ・ジョリー伯爵令嬢

 ビビアン・ビバリー伯爵令嬢


 そこには、マナの親友の名が印されていた。

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