40マナと親友アンジェリーナ
頷いた私にシルバーは、執務机から離れると、壁の書棚から一冊の本を手に取った。
「はい、じゃ、まずはこれを見て、見なさい。」
私はシルバーから、”姫将軍”と書かれた本を受け取った。
本を読もうと、中を開けると、黒いスクリーンが展開し、飛び出し絵本ならぬ、3D演劇が始まった。
ちょっと、小さいけれど、結構、精巧なつくりだ。
思わず、ソファーに座ると、その画像を食い入るように見始めた。
主人公だと思われる、きりりとした黒目で、茶髪を肩の所で束ねた美少女が、どこかの中庭の訓練場で、剣を振っていた。
<観衆を引き込むように、画面が主人公をクローズアップした。>
イヤァー
タァー
ハァー
そこに、ヒラヒラのドレスを着た茶髪の巨乳美女が駆け寄ってきた。
「マナ!」
「アンジェ!何かあったの?」
彼女は剣を振るう手を止めると、アンジェを振り返った。
「聞いて、私、王宮の舞踏会に呼ばれたの。」
アンジェリーナは、嬉しそうにマナに話しかけていた。
「へえ、よかったじゃないか。」
マナの言葉に、アンジェリーナは、不服そうに付け足した。
「なに言ってるのよ。マナも公爵令嬢なら、呼ばれてるでしょ。一緒に行きましょうよ。」
マナは困ったように、彼女を見つめた。
「まあ、確かに呼ばれてはいるが、私は遠慮するよ。父も別に、行けとは強要しないしな。」
「なっ、なんて勿体無いこといってるの。王宮の舞踏会なのよ。王も王妃も出るんじゃない。行きましょうよ。」
「アンジェ。私は舞踏会は苦手なんだ。行きたいなら、一人で行ってくれ。」
マナの一言にアンジェリーナは、涙をこぼさんばかりに目をウルウルさせた。
「マナ・・・。」
マナは、そんなアンジェリーナの態度に大きな溜息をつくと、肩を落とした。
「わかった。今回だけだぞ。次回は絶対、何を言われようと、行かないからね。」
「マナ、大好き。ありがとう。」
アンジェリーナは、背の高いマナに抱き付いた。
マナは諦めて、アンジェリーナを抱き返す。
二人は、一しきり友情を確かめ合った後、アンジェリーナは、新しいドレスをつくるために、マナと別れて、伯爵家に帰っていった。
「よろしいのですか、お嬢様?」
「ルドルフ。」
傍で見ていた執事長のルドルフがマナに声をかけた。
「どうせ、今回一度だけだ。大丈夫だろう。すまないが、メリルに舞踏会の用意を頼むと伝言しておいてくれ。」
「それは、メリルも喜ぶでしょう。」
マナは、執事長の言葉に、ため息交じりの声で応えた。
「ほどほどにしてくれと、くれぐれも伝えてもらいたいのだが、ルドルフ。」
マナの言葉にルドルフは真摯な声で返した。
「せーいっぱい、やって見ますが、私では、申し訳ありませんが、あまりお役に立てないことと思います。」
マナは、ルドルフの言葉に背を向けると、何かを振り払うように、それから力いっぱい素振りを開始した。
いやぁー!
ブンブンブンブン
たぁー!
ビュン
夕日が素振りをする主人公と、傍でそれを見守る執事長を赤く照らした。




