04.転生者に会えました。
私、イケメン騎士イアン、アイリーン姫の三人が、お互いに固まっていると、腕の中にいた愛犬プーが吠えだした。
こいつ本当に、空気を読まないやつだな。
私はプーを地面に降ろした。
「あのー、良かったら、二人とも、私の家にどうぞ。」
アイリーン姫は、先に立って、歩き出した。
私とイアンも、姫の後に続いた。
私は、二人を追い越さないように、そろそろと歩く。
普通に歩くのが、こんなに大変だとは、思わなかった。
逆に、しんどいくらいだ。
ふと横を向くと、イアンの馬は、賢いようで、イアンの後に、一緒についてきていた。
何故か、背には、我が家の愛犬が乗っていた。
器用なやつめ。
途中、イランが気をきたして、アイリーン姫を馬に乗せようとしたが、彼女はやんわり断ると、そのまま歩き続けた。
そこから20分も歩くと、がっしりした丸太小屋が現れた。
「すごい。すてきなログハウス。」
私が感嘆していると、隣では難しい顔をしたイアンがいた。
「アイリーン姫が、こんなみすぼらしい所に、住んでいるなんて、嘆かわしい。」
ぼそりと呟いているが、私にはその独り言が筒抜けだった。
アイリーン姫は、逆に私が感動したのを、そうでしょうという顔で見ながら、小屋に入れてくれた。
中はかなりきれいに、整えられていて、木の匂いがする。
「うーん、いい匂い。」
「そうでしょ。あなたなら、わかってくれると、思っていたわ。」
アイリーン姫がうれしそうに、小屋に招き入れてくれたのに、隣では苦虫を噛み潰したようなイアンが、そこに突っ立っていた。
アイリーン姫は、私とイアンを木で作られたテーブルに案内すると、すぐ傍にあった戸棚から茶器を出すと、お茶を入れ始めた。
イアンは慌てて、立ち上がると、なぜか私を睨んで命令する。
「おい、なんで平民であるお前が、そこに座っているんだ。早くアイリーン姫に、お茶を入れて差し上げろ。」
「ちょっと待った。なんで私が、お前呼ばわり、されなければならないのよ。私は、あなたの部下じゃないでしょ。」
私は思わず、怒鳴り返していた。
「はっ、平民が何を言う。」
私たちが怒鳴り合いを始めたので、アイリーン姫がそれを止めに入った。
「イアン、止めなさい。」
アイリーン姫の命令に、イランが彼女の方を向いた。
「ですが・・・・・・。」
「さあ、お茶が入ったわ。どうぞ。」
アイリーン姫が、すかさず出したお茶に、イアンは目を白黒させる。
「大丈夫よ。私、けっこう上手なのよ。」
アイリーン姫は、輝くような笑顔をイアンに向けた。
イアンは黙りこくって、お茶に手を付けた。
「おいしいです。」
一口飲んで感動したようで、イアンが呟いた。
「さあ、あなたもどうぞ。」
「いただきます。」
私はアイリーン姫が、入れてくれたお茶を飲んだ。
「どう?」
「えっと、美味しい緑茶ですね。」
私が感想を言うと、アイリーン姫が、目に涙を浮かべた。
「やっぱり、あなた。日本人なのね。」
「はい、そうですけど?」
何でそれに、そんなに感動できるのか、私には理解できなかった。
「あなたは、どうやって、ここに来たの?」
アイリーン姫が、緑茶を片手で持ちながら、小首を傾げて問いかけてきた。
うっ、なんてかわいいの。
思わず、赤面してしまう。
私は少し赤くなりながら、今までの経緯を話して聞かせた。
「そうだったの。散歩途中に穴に落ちるなんて、大変だったわね。怪我はしていない。」
「お陰様で、プーも私も大丈夫でした。」
私の声に足元にうずくまっていたプーが顔を上げて、愛想よく尻尾をふる。
アイリーン姫は、微笑むと、そっとプーにクッキーを差し出した。
プーは、高速で起き上がると、姫の手からクッキーを奪い、三人から距離をとって、それを食べ始めた。
大変満足そうだ。
おい、でもその態度、なんだか私が何も食べさせていないみたいじゃないか。
もう少し、愛想を振りまいてから、受け取れ、プー。
後で、教育的指導をしなければ。
私は心にメモをした。