35障子から漏れる光で・・・。
ルドルフは、午前中で私たちの訓練指導を終えると、午後は王宮に向かって、去っていった。
ああ、幻の羊羹作りが去っていく・・・。
私たちは、指導員であるルドルフを北門の前で見送ると、リボンはドクターが待つ医務室に向かい、パキは北門警備の為、そのままそこに残った。
シルバーとブランは、明日のルドルフ様の指導に耐えうるように、訓練場で部下たちを再特訓するそうだ。
私はこれといって、その日は、やることがなかったので、シルバーにすすめられるまま、北門の砦にある図書室に向かった。
図書室には、今までの軍で行われてきた戦略的作戦が書かれた戦記ものから、この国の周囲について書かれた書物など、それこそたくさんあった。
とりあえず、周囲の状況を把握するために、かたっぱしから、それらの書物を読んでいった。
「そろそろ閉めますよ。」
かなり夢中になっていたらしく、通路側のドアから声がかかって、初めて周囲が、薄暗くなっていることに気がついた。
私は慌てて、本をもとに戻すと、迎えに現れたブランに送ってもらい、公爵家に帰った。
「今日もありがとうございました。」
私は、ブランに頭を下げた。
「いえ、明日はあなたとパキのお蔭で幻の羊羹を食べられるから、気にしない様にとシルバー隊長が言っていたので、気にしないでください。」
それって、嬉しがっているのは、隊長だけって、こと?
私が、そう考えた、まさにその時、ブランから声がかかった。
「ちなみに、ここだけの話ですが、俺も結構、甘いものが好きなので、明日の幻の羊羹は、楽しみにしているです。それじゃ。」
ブランは、そう言って、私を送ると、颯爽と帰っていった。
私はホッとして、ブランを見送った後、昨日と同じように、公爵家でルドルフ作の和食を堪能した。
ふと横を見ると、昨晩からの特訓の成果が出ていて、マナのご夫君であるグリムも、かなりきれいに食事を食べていた。
その成果か、その日は、一時間ほどの特訓で、ルドルフには、解放していただいたそうだ。
私は、食事後、公爵家で貸してくれた、東の離れに向かった。
この建屋は、正面が洋風なこの国の造りに、マッチして建てられており、左右が純和風の造りになっていた。
私はルドルフやメイドさんが使っている東の屋敷にある和室を借りていた。
ちなみに今日も、食後に、愛犬プーに会いに行ったのだが、自分の恋人に求愛中の為、見事に無視された。
やれやれ。
私はその後、自分の愛犬を放置して、借りている和室に向かった。
和風なので、玄関があって、廊下に上がる前に靴を脱ぐ。
うんうん。
これは、めんどくさいが、やっぱり日本人としては、落ち着く。
私は、離れにある浴室でお風呂に入ると、部屋に戻って、早々と布団に横になった。
朝方、なぜかまだ日が昇っていないのに、目が覚めた。
結局、寝ていられなくなって、洋服に着替えると部屋の外に出た。
流石に、メイドさんも、まだ起きていない。
通路に出ると、ひんやりとして、空気とともに甘い匂いが、どこからともなく、流れてきた。
私は足音を忍ばせて、その匂いの元をたどりながら、通路を歩いていて行った。
そして、ふと障子に映る影に気がついた。
私は、障子越しに、淡い光に照らされた男が、包丁を小刻みに動かす音とそれに従い漂ってくる、濃厚な匂いに鼻をひくつかせた。




