表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/99

31礼儀作法

 ルドルフの手により、メイン料理が作られ、六人はそれぞれ夕食の席に着いた。

 公爵に始まり、順に料理が運ばれてくる。

 私は、それを見て、唖然とした。


「えっ、和食!」

 ごはんに、味噌汁に、サンマらしきものの塩焼き?

 えっ、でもなんで?

 私が疑問符を連発していると、スズが説明してくれた。


「基本、公爵家の食事は、朝と晩は和食よ。昼は、クリスのご要望で、こっちの午後の紅茶を取り入れているけど、基本は和食わしょくなの。」

 スズはにっこり微笑んで、私に説明してくれた。

 私は唖然としながら、箸を手にとった。

「あなたは、他のものの方が、よかったかしら?」

 心配したスズが声を掛けてくれた。


「いえ、そんなことはありません。ただあまりにも以外だったもので、ちょっとびっくりしただけです。」

「そう、なら良かったわ。」

 スズがそう言うと、夫であるクリスに目を向けた。


 クリスが手を合わせると、全員がそれに倣う。

「「「「いただきます。」」」」

 その後、全員が箸を手に取って、食べ始めた。


 私は慌てて、遅れながらも、”いただきます”を言うと、箸を持った。

 私が箸を持った瞬間、なぜかルドルフから、殺気のような鋭い視線を感じた。

 私がそちらに意識を向けると、それは、すぐに霧散してしまった。


 どうしたんだと思って、周囲の様子を見ると、唖然とした。

 スズやマナは、わかるとしても、クリスもホークも、器用に箸を使って、和食を食べていた。


 ふと気がつくと、その中で、グリムだけが、箸に悪戦苦闘しているようだ。

 周りに、ボロボロと料理がこぼれている。

 綺麗な顔をしている分、そのしぐさが、思いっきり残念に映る。


 私は、なんとなく気になって、それをチラチラ見ながら、食事を終えた。

 最後に、メイドさん達が、熱い緑茶を持って来てくれた。


 思わず味わえた和食に大満足しながら、お茶を飲んでいると、ルドルフがみんなに羊羹を持って来てくれた。

 羊羹なんて久しぶりだ。


「まあ、これ新作ね!」

 思わず、スズから感嘆の声があがった。

「なんと、ここでルドルフの新作を食べられるとは。本当に家に帰って来て、良かったっと思う瞬間だな。これは・・・。」

 マナの言葉に、スズが頷いている。


 なんか、そんなことでいいのかと、私は思ったが、ここは口に出さない方がいいだろうと思って、だまっていた。

「さあ、皆様。緑茶と一緒に、味わって下さい。」

 ルドルフに促され、全員が羊羹を食べた。


 途端、チーズケーキ以上の感動を味わった。

 なんだ、この舌の上で、蕩けるようにうまい羊羹は?


 すご・・・凄すぎる。


 私は思わず唸っていた。


「これは、店どころか、王宮に出せる味だわ。」

 スズがそう言葉に出して、賞賛した。

「うん、さすが、ルドルフっていう味だね。」

 マナも絶賛だ。

「次回宰相室に来るときは、こちらのものを持って来てほしいね、ルドルフ。」

 ホークの声に、ルドルフは満足げに答えた。


「畏まりました。」


 ルドルフがクリスを見た。

「私の意見は、スズと一緒だ。とても美味しいよ、ルドルフ。」

 最後にグリムを見る。

「美味しいです。」

 ルドルフが一歩下がった所で、全員が食事を終え、”ご馳走様”と言うと席を立った。

 私も皆に倣って席を発つ。


 ふと見ると、ルドルフがグリムの後ろに立って、何か呟いていた。


 グリムの顔が、真っ青になる。

 私が唖然と見ていると、マナがグリムの肩を叩いて、

「だから私は、旅先でも、箸の練習は、欠かすなと言ったんだがなぁ。」

 と言うと、さきに食堂を出て行った。


 見ていると、多量の豆が載った平皿と何もない平皿が、グリムの前に置かれていた。

「では、最低30回は、往復しましょう、グリム様。」

 そう笑顔で囁く、ルドルフがそこにいた。


 私は、箸の使い方を厳しく躾てくれた、母に感謝しながら、食堂を後にした。

 翌日、私は、目の縁に隈をつくったグリム様が、項垂れた様子で、朝食の席についているのを発見した。


 私は昨日以上に、気合を入れて、その日の朝食に臨んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ