30公爵邸に戻ってきました。
秘密の会談が、王宮で行われていた頃、私は、何も知らずに、のんきにブランに公爵邸まで、送ってもらっていた。
なんだか悪いので、自分一人で歩いて帰ると最初は言ったのだが、ルドルフに頼まれたせいと子供が一人で帰ると、誘拐に会いやすいということで、誰も話を聞いてくれなかった。
最初はかなり明るかったが、屋敷に着く頃になると、だいぶ日が陰って、暗くなっていた。
周囲の草からは、虫の声が忙しなく聞こえてくる。
ブランは私を気遣って、送りながら、隊長との出会いを話してくれた。
どうやら最初ブランは、隊長の懐を狙おうとしていたらしい。
でも、なんでそんなことをしたんだろうと、聞くと素直な答えが返って来た。
「俺、最初、隊長を女性と間違っちゃってさ。お財布掏ろうとして、捕まっちゃったんだ。」
後にも先にも、そんなドジを踏んだのは、あの時だけなんだけど、よくよく考えれば、そのおかげで今のブランがいるそうだ。
もし、その時、他の人に捕まっていたら、今頃どこかの人買いに売られていただろう、とブランは苦笑いして教えてくれた。
なんともすごい世界だ。
貧乏人や力のないものは、捕まると人買いに売られるのが、常だそうだ。
理由は、簡単で牢屋に入れるより、経費が掛からず、懲らしめになるからだそうだ。
いいんかい、それで。
私から言わせればそれは人権無視に値するんだが、彼らに言わせれば、貧乏人に人権はないそうだ。
凄すぎる世界だと思わず呟いたら、それ普通なんじゃないの?
と逆にいわれた。
異世界半端ないです、本当に。
私が涙目になった時に、ちょうど屋敷に着いたので、私はそのままブランと別れ、屋敷に入った。
すぐに屋敷のメイドさんが現れて、私を居間に連れて行ってくれた。
居間では、公爵夫人と公爵様が優雅にお茶をして、待っていてくれた。
いつも傍に控えている老執事のルドルフさんは、どうやら、まだ王宮の用事が終わらず、屋敷には帰っていないようだった。
「どうだったの、黒子?」
公爵夫人であるスズが興味津々で聞いて来る。
私は、今日会った出来事を時系列順に、面白おかしく話して聞かせた。
特に、チャゲの奥様であるリボンの話に、公爵夫人であるスズは、いたく気に入ったようで、最後に今度連れてくるようにと私は言付かった。
私は取り敢えず頷くと、そこに、今朝、別れたマナとグリム、それにルドルフ、そしてホークがきれいに浮き上がった魔法陣から現れた。
「まあ、以外と早かったわね。みんな。」
スズの問いに、全員がそれぞれ答えた。
「「遅くなりました。お(義)母様。」」
将軍と副将軍が、挨拶する。
「ただいま、帰りました。おばあ様。」
宰相が満面の笑みで微笑んだ。
「ただいま、お支度をいたします。奥様。」
老執事のルドルフがお辞儀をしながら、頭を下げると、居間を去っていった。




