03.蔦を撃退したら、魔女に間違われました。
目があった瞬間、思わず見とれていた。
真っ青な瞳で、胸には鍛えられた筋肉がこれ見よがしに、騎士服の間から垣間見えた。
クソー、なんで西洋人って、こういっちゃなんだが、ほりが深くて、顔良くて、スタイル抜群なんだ。
嫌味なくらい、カッコいい。
私が見惚れていると、そいつは、何かぼそりと呟いた。
「はっ、何?」
私が聞き返すと男は、さっきより、大きな声で問いかけてきた。
「お前がクロのモリの魔女か。」
「はっ、黒井まり?」
どうやら、私を誰かと間違えているようだ。
「残念ながら、私は黒井だけど、名前は黒子よ。黒子。」
私は大声で、自分の名前を名乗った。
「くろい?」
男は低い低音ボイスで、私の名を呟く。
ちょっと、良い声なんだけど、なんだか態度が気にいらん。
男はいかにも蔑んだ様子で、私を眺めまわしている。
「どこのものだ。」
「だから、名乗ったでしょ。黒井黒子。それより人に名のらせたんだから、そっちも名のりなさいよ。」
私が文句を言うと、男は小馬鹿にしたように、鼻で笑う。
「平民に名のる名はない。」
「はっ、なんですって、何様よ。」
私は思いっきり睨むと、くるっと踵を返した。
こいつと話してると、ムカつき過ぎる。
私はやつに背を向けて、飛ぶように歩き出した。
はぁー、とにかく、あいつより、あのバカ犬探さなきゃ。
置いていく訳に行かないし、どこ行ったのよ。
「プー、プー。」
私が犬の名を叫びながら、飛ぶように歩いていると、後ろから蹄の音が聞こえてきた。
今度は何だと、立ち止まると、さっきの騎士が、私を追いかけてきたようだ。
唖然としているうちに、男の馬が、私の横に止まった。
「どこに行く、娘?」
こいつ痴呆症か。
私さっき名乗ったのに、もう忘れてる。
「黒井か、黒子。どちらかで呼びなさいよ。」
「では、黒井。どこにいく?」
「私とさっき一緒にいた犬を捜してるだけよ。」
「あの蔦に、果敢にも吠えかかった犬のことか?」
「果敢かどうかは、わからないけど、そうよ。その犬よ。」
私たちが話していると、前方から悲鳴が聞こえた。
「イヤーン、誰か助けて。」
その声に、騎士は敏感に反応して、馬を駆けさせた。
私は無視して、行こうと思ったけど、結局、好奇心には勝てず。
後ろから飛ぶように歩くと、馬で駆けていく騎士について行った。
「大丈夫か?」
私と騎士が駆けつけると、きれいな銀色の髪の美女が、我が家の愛犬プーに、舐めまくられている姿が、そこにあった。
小人の次は等身大の美女って、何考えてるんだ、こいつ。
私は腰に手をやると、大きな声で、プーに命令した。
「お座り!!!」
プーは反射的に、地面に座った。
私はすかさず、犬を捕まえると、美女から引き離す。
美女は乱れた着衣をなおすと、立ち上がった。
そして、私とイケメン騎士を見て、固まった。
「なんで、ここにイアンと日本人の女の子がいるの?」
私は彼女の言葉に固まった。
へっ、今、この美女さん、日本人の女の子とか言わなかった。
「アイリーン姫、なぜ、あなたがここに?」
騎士も美女を見て、固まった。