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29.作戦

「理由は、なんだ?」

 マナは、まっすぐ息子であるホークの目を見つめた。

 ホークはマナの目をそらすことなく、その目を見つめ返した。

「それは、異世界からの訪問者がいるからか?」

 ぼそりとマナが呟いた。

 ホークは目線で肯定した。

「だが、マラカナイトだけでは、戦争に勝利は出来んぞ。」

 マナの意見は、もっとも意見だとホークも思ったし、もちろんそれを考えなかった訳ではない。

 だが、ホークが目指すものは、勝利ではない。

「勝利するのは、難しいでしょうが、・・・。」

 マナは、ホークの問いかけにハッとした。

「公正な和平条約に持っていくのには、十分だ。」

「ええ、そのつもりです。」


 マナは笑いながら、それに負荷状況について、付け加えた。

「だが、もし負けた場合は、どうするつもりだ?」

 ホークは、ニヤリとして、説明した。

「その時こそ、あなたに何とかしてもらいますよ。」


「それは、国の為なら、母親でも売るぞって、言ってるように、聞こえるんだが?」

 マナの笑顔での質問と隣でさっき以上に顔を真っ赤にしている人物に、ホークは答えた。

「負けなければ、問題にならないので、それは心配無用では?」

 ホークの問いかけに、マナは頷いた。

「確かに、承ったよ、宰相。相手国に負けない様に、私もがんばろう。」

 マナが席を立とうとしていると、ホークがそれを止めた。

「今、ルドルフがケーキを持って、こたらに向かっているんですが、どうしますか?」

「なんだと!」

 マナは立ち上がりかけて、またソファーに腰を下ろした。

「それは、間違いないんだな。」

「ええ、もちろん。」

 マナは、呆れ顔で息子を見た。

 こう手のひらの上で踊らされるのは、面白くないが、逆に自分をここまで翻弄する息子の手腕に満足もしている。

 隣に憮然と座っているグリムを見ると、彼は息子の成長ぶりに困惑しきりのようだ。

「では、待っている間に、こちらをお願いします。」

 ホークはそう言うと、グリムとマナの前に書類の束を置いた。

「これは、なんだ、ホーク?」

「あなたたちが、隣国に調査に行っている間にたまった書類ですので、一日も早く処理をお願いします。」

 ホークは天使の笑顔で、二人に微笑みかけた。

「わかった。」

 マナは自分の分を受け取ると、それをグリムの分に上乗せした。

「マナ?」

 グリムが顔を上げた途端に、マナはグリムの耳に唇を近づけると、囁いた。

「お礼は、夜払うよう。」

 グリムの目が大きく見開かれ、その書類を受け取った。

 それを見ていたホークが、さらに書類を上乗せする。

「おい、何で増やす。」

「その分の請求は、あちらにお願いします。ねえ、お母さん。」

 マナは、久々に息子から呼ばれ、嬉しそうに頷いた。

「くそっ。」

 グリムは、多量に積み上げられた書類に取り掛かった。 

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