27.王宮にて、秘密の会談
「久々に、街に来たけど、賑やかで何よりだ。」
マナは、すれ違う人たちの顔を見ながら、歩いていく。
「マナ。」
「なんだ、グリム。なにか言いたいことでもあるのか?」
君は、俺を選んだことを、後悔しているんじゃないか?
グリムは、そう言いかけて口を噤むと、そのまま歩き出した。
「いや、なんでもない。早く、王宮に行こう。」
マナはグリムを振り向いて、彼の顔を見ただけで、結局何も言わなかった。
そのまま、前を向くと、まっすぐ王宮を目指して、歩き出した。
しばらくすると、城に着いた。
城門で、イアンとすれ違う。
「やあ、イアン。何を急いでいるんだ?」
「将軍?」
イアンは、立ち止まるとマナに敬礼した。
「あの申し訳ありません。私用でいろいろありまして、ホークなら、今、宰相室にいるはずです。急いでいますので、私はここで、失礼します。」
イアンはそれだけ言うと、門から飛び出して行った。
「イアンは、相変わらず、忙しないな。」
マナはそう言うと、宰相室に向かった。
宰相室には、二人の兵士が扉を見張っていた。
「ご苦労だな、いつも。」
二人の兵士は、目の前の人物に、目を瞠った。
「将軍!」
マナがニッコリ微笑むと、二人の兵士は、慌てて扉を開いた。
その部屋の中には、多量の書類に埋もれた、宰相がいた。
マナは、すぐさま書類を蹴倒して、宰相であるホークに飛びついた。
「会いたかったぞ、ホーク!」
マナはホークの膝上に座ると、顔じゅうに、キスの雨を降らす。
「ちょっ・・・ちょっと、止めて下さい、お母さん。ここをどこだと、思っているんですか?」
「息子の部屋だと思っていたんだが、違うのか?」
マナはキスを止めると、キョトンとホークの顔を見た。
「間違っていませんが、なんで会った途端に、キスするんですか?」
「愛しい息子に、久しぶりにあった喜びを、全身で表現しているんだ。なにが悪い!」
ホークはため息をついた。
「それは、私もお母さんに会えて、うれしいんですが、キスされなくても、その気持ちはわかりますので、今度からは、やめて下さい。それに、さっきからそれを見て、非常に不機嫌になっている人物が、目の前にいるんですが、それはいいんですか?」
「なんだと、私が自分の息子に会って、うれしいと喜んでいるのに、不機嫌になっているやつがいるだと、一体、そいつはどこの誰だ。」
ホークは、目の前に立っている人物を見た。
マナも、後ろを振り返って見た。
「なんだ、グリムしかいないぞ。やつは、お前の父親だ。なんで不機嫌になるんだ?」
マナはホークに、抱き付いたまま、そういった。
グリムは、息子のホークに抱き付いているマナの傍に行くと、ベリッとマナをホークから引き剥がした。
「おい、グリム。まだ息子とのスキンシップが足りていないんだが?」
マナが文句を言う。
グリムは、非常に不機嫌そうに呟いた。
「マナは、将軍だ。そして、息子とはいえ、ホークは宰相だ。先に将軍としての報告をするべきだろう。」
「お堅いな、グリムは。別に息子の膝の上に乗っていても、報告はできるぞ。」
マナは、気が付くと、ソファーに座っている、グリムの膝に上に、いつの間にか、抱かれていた。
「おい、グリム。なんで私が、お前の膝の上にいるんだ。」
「息子の膝の上より、夫である俺の膝の上にいるほうが、世間一般的には、常識に叶っている。」
なぜかグリムは、ご満悦で、そうマナに、ご高説をたれた。
そこでさっきから、あきれてものも言えなかったホークが、我に返った。
「二人とも、もう、その話は、どうでもいいですから、調査報告を、先にお願いします。」
ホークの声に、二人は息子の顔を見て一言呟いた。
「「お前の推測が当たっていた。」」
ホークは目を見開いた後、散らばった書類を拾い上げた。
「やはり、そうでしたか。」
ホークはそう答えてから、髪をけだるげに掻き上げると、立ち上がって、マナとグレイが座るソファーに行き、その前に座った。
「あなたはどうしたいんですか、お母さん?」
マナは、グリムの膝の上から真剣な顔でホークを見つめると、口を開いた。
「私はこの戦争を止めたい。」
ホークは、予想していた答えを聞いて、真剣な顔で口を開いた。
「方法は一つです。お母さんが、隣国の王と結婚すれば、戦争はなくなりますよ。」
ホークの一言に、マナは押し黙った。
グリムが、膝の上に座っていたマナをきつく抱きながら、叫んだ。
「だめだ。ダメだ、ダメだ、絶対、それだけは、ダメだ。」




