23.レジェンド・オブ・ルドルフ
「おい、じーさん。北門の砦で、兵士訓練の補佐をやりたいんなら、俺を倒してからにしろ!」
チャゲは、模擬刀を片手に、執事を挑発している。
彼の発言に、北門にいる兵士たちが、全員、訓練場で一方的にやられるであろう試合に、ワイワイ騒いでいた。
「パキ、北門の軍医と医療魔法を使える人間を、大至急、訓練場に連れて来なさい!」
シルバーの鬼気迫る声にパキは、慌てて、訓練場から飛び出して行った。
「ブラン、私たちがスキをついて、チャゲを救出したら、パキが連れて来た軍医と医療魔法を使える人間にすぐに治療させなさい。」
ブランはシルバーの言葉に頷いた。
「じゃ、チビッ子、行くわよ。」
シルバーの声に、私はあっけにとられた。
「ちょっ、私も行くんですか?」
「当然でしょ。私一人で英雄を止められる訳ないんだから、当たり前でしょ。」
私は首を横に振った。
「私は素人ですよ。そんなこと無理です。」
私は後ろに下がろうとして、シルバーに捕まった。
「チャゲは、ああ見えて、まだ新婚さんなのよ。まさかあなた、自分に力があるのに、チャゲの奥方を未亡人にしようとはしていない?」
「そっ、そんなことは、な・・・。」
私が渋っているうちに、訓練場では、チャゲが老執事のルドルフに斬りかかっていた。
全員が見守る中、チャゲの剣はあっという間に弾かれ、気がつくとバスケットを小脇に抱えた老執事の手に、その剣があった。
「行くわよ。」
一撃がチャゲの左肩を襲った。
彼は左肩を抑えて、地面にうずくまる。
二撃目が振り下ろされる刹那に、シルバーと思わず一緒に駆け出した私が立ちふさがった。
シルバーが二撃目を弾いて、その直後にシルバーを襲った斬撃を、私が彼から渡された剣で防いだ。
ドン!
周り中に、重い衝撃波が響くような、重い剣が私の剣にかかった。
昨日のマナとの力比べが、子供とのけんかに思えるほどの力だった。
思わず両手両足に、力を入れて踏ん張る。
気を抜くと、倒されそうだ。
見ると老執事のルドルフは、バスケットを右腕に抱えたままで、微動だにしていない。
このままだと、力負けしそうだ。
私がそう真剣に思った時、目の前にいたルドルフがふと微笑むと、サッと剣を引いてくれた。
見ると、パキが連れて来た軍医と医療魔法を使える人間が、大慌てでチャゲを治療している。
彼は血だらけだが、息はあるようだ。
周囲はシーンとなって、治療の行方を見守っている。
「大丈夫ですよ。一応、かなり加減しましたからね。」
バスケットを抱えた老執事のルドルフが呟いた。
あれで加減したの?
とてもそうは見えなかったんだけど・・・。
「おい、誰か担架をもってきてくれ。」
軍医が怒鳴っている。
周囲の兵士が動いて、訓練場に担架が運ばれた。
シルバーがチャゲの所に行って、一言二言、話すと、担架で彼は運ばれていった。
私が見ていると、シルバーが急いでこちらに歩いて来た。
「お待たせしました、ルドルフ様。こちらにどうぞ。」
シルバーが先に立って、ルドルフを案内する。
ルドルフは黙って、彼の後についていった。
私は呆然として見ていたが、私が動かないのを見て、シルバーは私にも声をかけて来た。
「なに、ボウッとしているの、チビッ子。あなたも来なさい。」
私は、慌てて、彼らの後を追った。




