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20.南門の王都守備隊

 めずらしいことに、年に一度しか行われないはずの王都守備隊の隊長交代が、なぜか、今年は今頃になって、急に行われた。

 まだ、南門の隊長として配属されて、三か月しかたっていないのだがおかしい。

 別に、今回は、自分の趣味の男を、無理やり手籠めにした覚えもないのに、なんでだろうか?

 それも一度も配属されたことがない、北門の隊長に配置転換されたのだ。

 あそこは、最強部隊の名にふさわしく、シルバー好みの絞り込まれ、鍛え上げられた筋肉を持つ男が、わんさかいる。

 間違いにしろ、なんにしろ、こんなおいしいことはない。

 シルバーは、副官のブランを従えて、和紙に書かれた命令書を携えて、北門にある王都守備隊の砦に向かった。


「本当に何にもしてないんでしょうね。シルバー隊長。」

「まったく身に覚えはないわよ。さすがに、自分でなにかやれば、いくらなんでも憶えているわ。それに左遷なら、北門じゃなく、中央広場にある街の守備隊とか、地方砦とかでしょ、普通。」

 シルバーが副官のブランにそう言うと、やつは疑わしそうに、こちらを見て、のたまった。


「シルバー隊長を街の守備隊に配属したら、一般人の若者が寄り付かなくなりますし、地方の砦じゃ、砦中の兵士がシルバー隊長に怯えて、使い物にならなくなりますよ。」

「怯えるって、何に怯えるっていうのよ。失礼ね。」

「そりゃ、いつ尻の穴を掘られるか・・・。」

 シルバーは、副官であるブランの後頭部を殴りつけた。

「洗練した王都守備隊に所属する兵士のくせに、下品な言い方は、やめてちょうだい。」

「じゃ、なんて言えば、いいんですか?」

「せめて、いつ愛されるか心配だわ、くらいにしておきなさい。」

「あ・・・ああ・・・愛し合う?襲われるの、間違いじゃないですか。」

 シルバーは思いっきり憤慨した。

「いっておくけど、私は誰彼かまわず、襲いかかったりしないわよ。」

 副官のブランは、顔を眇めた。

「どの口が、そんなウソを吐くんですか。三年前の東門の騒動を忘れたんですか。」

「まあ、いやだわ。ちょっと構ってやったら、本気になって。挙句に、この私に、王都守備隊を辞めて、屋敷に囲われろなんて、命令する最低男なんて、知らないわよ。」

「本当にあれさえなければ、今頃、近衛騎士の副隊長くらいには、なっていたのに、もったいない。」

 副官のブランは、マジマジとシルバー隊長を見た。

 美しく整った顔に、王家の血が流れているのではないかと思わせる、サラサラの銀髪。

 それに着痩せして見えるが、脱ぐと鍛え抜かれた筋肉の持ち主だ。

 このオネエ言葉と男好きさえなければ、世の女性たちにモテモテだろうにとたまに思うのだが、シルバー隊長は、全く気にしていないようだ。

 暇さえあれば、剣の修行か、同僚もしくは、部下に好みの男がいないかを物色するという変態だ。

 そんなシルバー隊長は、変態ながら腕が立つため、なぜか彼のストッパー役として、今回もブランが一緒に配置変更になった。

「なにさっきから、マジマジと見たりして、私に抱かれたいの?」

 シルバー隊長のお誘いに、ブランはきっぱり断った。

「シルバー隊長が女だったなら、喜んで襲われたんですが、生憎、俺は性差別主義者なんで、お断りです。」

「いやぁね。そんなことを言ってると、女の子にも、モテないわよ。」

「ご心配なく。女を抱いたことがない、隊長にそんなことを言われたくは、ありません。」

 二人がそんなことを言い合っているうちに、北門にある砦についた。


 北門いた兵士に和紙の命令書を見せて、ここにいるチャゲ隊長の居場所を聞くと、訓練場だという。

 二人は、取り合えず、訓練場に向かった。

 まっすぐ訓練場に向かっていくと、なにやらざわざわと声が聞こえてくる。

 どうやら、何かの訓練をしているようだ。


「さすが熱心ですね。北門の兵士たちは・・・。」

 ブランとシルバーの二人が訓練場に入っていくと、ちょうどチャゲ隊長が、小さい子の脳天目掛けて、模擬刀を振り下ろした所だった。


「あぶない。」

 ブランは思わず声を上げていた。

 小さい子が頭を抱えて、うずくまる図が頭に浮かんだのに、状況は驚くべきものだった。

 その小さな子が、なんとチャゲ隊長の模擬刀を何も持っていない手で受け止め、なおかつ見ていると、互角に力の押し合いをしている。

「うそだろ。」

 さらには、押すと見せかけて、力を前に流すと、チャゲ隊長を押し退け、さっと見を翻すと、何かの紙を彼に見せている。

「面白い子ですね。」

 思わず呟いたブランに、シルバーはニヤリと笑いかけた。

「チャゲに力負けしなかった女を初めて見たわ。」

「おんなぁ!!!」

「あら、気がつかなかったの。それに、さっきの話だけど、付け加えておくと、女を抱いたこともあるわよ。」

「えー。」

 ブランは、チャゲ隊長を倒した現場を見たことより、シルバー隊長が女を抱いたことがある方に、より衝撃を受けた。

「ちょっ、シルバー隊長。今の話、ウソですよね。」

 シルバー隊長は、ブランの質問になにも答えずに、チャゲ隊長が立っている場所に向かって、スタスタと歩いて行った。

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