02.穴に落ちたら、小人を拾いました。
私が二匹の小人を手のひらに乗せて、途方に暮れていると、最初にプーに舐めまくられた、巨乳の金髪美女さんが、気がついたようで、もう一人のイケメン君をゆすり始めました。
「目を覚まして、ブルー。」
よく見ると、なんでか彼女の背中には、薄紫の虫のような羽があった。
「はね!!!」
私がしげしげと見ていると、揺すられて、やっと目を覚ましたイケメン君が、うっすらと目を開けた。
「バイオレット?」
「ブルー、良かった。生きてた。」
バイオレットと呼ばれた彼女は、ブルーと呼んだイケメン君に抱き付くと、いきなり濃厚なキスを始めた。
ちょっと、待て。
人の手のひらの上で、ナニをしようとするんだ。
私は、危機感を感じて、二人を止める為、声をかけた。
「あのですね。お二人さん。」
キャーキャーキャーキャーキャー
ウワーウワーウワーウワーウワー
叫び出した小人を無視すると、私はそのまま話しかけた。
「君たち、人の手のひらの上でナニしようとしてるの。気がついたなら、どこか、よそでそういうことは、やってほしいんだけど。」
私のことに気がついた二匹は、抱き合いながら震えていた。
私は大きな溜息をつくと、再度お願いした。
「だから、ナニをしたいんなら、私の手の上じゃないところで、して頂戴。」
「「えっ。私たちを捕まえないの。」」
わけのわからないことをいわれた。
「別に君たちを捕まえようとは思わないから、どっかよそでやってちょうだい。羽があるんだから、飛べるんでしょ。」
私が尋ねると、二匹は恐る恐る羽を広げると浮かび上がった。
気がつくと、綺麗な金色の光をまき散らしながら、二人はどこかに飛んで行った。
はぁーやっと、わけのわからんものがいなくなった。
さて、どうしよう。
とにかく家に帰りたいんだけど、どうしたもんか。
見ると愛犬プーは、さっきの犬用おやつを咥えて、ご満悦だ。
普通はこういう時、御主人様を助けるために、匂いを頼りに家に帰りつく名犬が定番だが、こいつはバカ犬だから、それは期待できない。
さて右に行くか、左に行くか。
それとも前に行くか、後ろに進むか。
どの方向が正解なのだろうか?
私は溜息をついて、もう一度周りを見た。
怪しげな植物がたくさんありそうな森以外、何もない。
朗報はコートを着ていると、汗で蒸し焼きになりそうなので、凍死の心配はなさそうだ。
私はコートとセーターを脱ぐと、腰に括りつけた。
もしかしたら、日が暮れても家にたどりつけず、このコートとセータを着て、仮眠なんてことに、なるかもしれない。
あまりそんな状態には、なってほしくないが、とにかく、プーを連れて歩き始めた。
歩き出して、気がついたのだが、なんだか体が非常に軽い。
穴に落ちた効果で、痩せたのかと思って、ウェストを触るが、別に細くなったわけではないようだ。
それにしても、一歩が物凄く軽い。
歩いていても、地面を飛んでいるような感じだ。
見ると、本当に地面を蹴って、飛んでいた。
我が家の愛犬プーも同じようで、軽やかに飛んでいる。
周りの景色を見ると、景色が流れるように後ろに消えていく。
これなら、短時間で、この森を抜けられるかも知れない。
私とプーは喜んで、森の中を進んだ。
しばらく進むと、前方でベチャとかガチャガチャと金属がこすれ合う音が聞こえた。
何だぁと思っているうちに、その現場に、足を踏み入れてしまった。
見ると、長身で金色の甲冑を纏った茶髪の男が、とっても太い筋肉質の腕で、太い長剣を振るって、襲ってくる蔦を切り払っているところだった。
これは、見て見ぬ振りをして、ここから退散するのが、吉だと思った私が踵を返そうとしたところ、我が家の愛犬プーが何を思ったのか、私の後ろから、その蔦に向かって、猛烈に吠え始めた。
ウソだろ、おい。
蔦は音に反応したのか、一斉に私たちに向かって来た。
やばい、逃げようと思った時には、蔦に絡みつかれていた。
げっ、なんでこうなる。
私の体は、蔦に持ち上げられていた。
愛犬プーは、吠えるだけ吠えると、どこかに逃げて行ったようだ。
おのれ、後で憶えていろ。
私はそう思いながらも、蔦に引きずられ、何かの口に放り込まれそうになった。
冗談ではない。
こんな所で、あんなものに、食われたくはない。
私は必死に腕を動かすと、蔦に手を掛け、気合とともに蔦を引きちぎる。
なんでか以外に、簡単に引きちぎれた。
気合は、まったく必要なかった。
私は、次々に襲ってくる蔦を、ブチブチ引きちぎっては投げた。
そのうちに、気がつくと襲ってきていた蔦がなくなった。
見ると、口を開けたままの蔦なし植物がそこにあった。
私は腹いせに、その口を開けている物体をおもっきり蹴った。
それは、ヒューンという効果音とともに、遥か彼方に飛んで行った。
「はぁー、すっきりした。」
私が後ろを振り向くと、固まっている超絶美形の騎士がそこに立っていた。