19.北門の王都守備隊
私は、次の日に、将軍勅令で、すぐに王都守備隊に配属された。
王都守備隊は、四つの門に、一隊ずつ分かれて守備をしていた。
なぜか私が配属されたのは、後で知ったのだが、最強メンバーがいる街の中心地から北側に位置する守備隊だった。
私は、最初、配属場所に直接一人で行こうとしたのだが、あいにく王宮やら公爵邸には、魔法で移動してしまった為、地理が全くわからなかった。
なので、老執事のルドルフに地図を書いてもらおうとしていたら、どうせ通り道だからと、なんと将軍自ら、案内してもらうことになった。
いいんだろうか、こんなことで。
不安に思いながら、私はマナとグリムの美女将軍と美男副将軍の後をちまちまと歩いて、ついていった。
私が歩いていると、前にいたマナから質問がきた。
「昔、御爺様に聞いたんだが、黒子の国は、いまはどれくらい戦争をしているんだ?」
「私が住んでいる時代は、もう、統一されているので、戦争はしていませんよ。」
「「なんだって、戦争がないのか?」」
マナとグリムは、大きな声で叫んだ。
「だが、私が御爺様から、聞いた時は、下剋上だ、なんだと、戦ってばかりだと聞いていたんだが。」
「いろいろありましたが、それからたくさんの武将が出て、最後は、統一されました。」
そのいろいろも、くわしく話すと長くなるので、ここは説明をしない方がいいだろう。
私はそう思って、詳細な説明は避けた。
ちょうど、結論だけ言ったところで、守備隊が駐屯している砦が見えてきた。
マナが残念そうに、別れを告げた。
「本当は、そのいろいろを聞いてみたいが、あいにく、今日はこちらも、時間がない。また今度、じっくり話を聞かせてほしい。」
マナはそう言うと、黒子に、和紙で出来た書類を渡すと、グリムを連れて、そのまま街道を、まっすぐ南に歩いていった。
私は彼らを見送った後、堅牢な造りの砦に向かった。
門の前で、たむろしていた二人の兵士のうち、茶髪の男を捕まえて、書類を見せる。
「なんだい、お嬢ちゃん、迷子かい?あいにくここは、北門の王都守備隊だ。今、街の中心部にいる守備隊に連絡をとってあげるから、ちょっいと待ちな!」
本当にこっちの人間は、人の話を聞かないな。
私は中心部にいる守備隊に連絡をとろうとしている、たぶん、私より若い兵士を止めた。
「いえ、その連絡は必要ありません。私は今日、ここに配属になった兵士の黒子・黒井です。」
「はっ? ハイゾク?」
私は和紙を見えるように、男の目の前に掲げて見せると、もう一度繰り返した。
「今日、ここに、配属になったクロイです。」
ついでに、にっこり微笑んであげた。
今日から同僚になるのだ。
少しくらい愛想よくしといた方が、今後の仕事も、円満に行くというものだ。
若い茶髪兵士は、信じられないものを見る目で、私をまじまじと見ると、慌てて砦の中に走っていく。
私は二度手間を省くため、もう一人いた兵士の脇をすり抜けると、”待て!”と怒鳴る男を置いて、その若い兵士の後を追った。
「チャゲ隊長、大変です。門の所に、季節はずれの新人が来ています。」
若い茶髪の兵士は、砦内にある訓練場で、ひときわガタイのデカイ男に声をかけた。
「新人?」
私は呼ばれたので、手を上げて、返事をした。
「はい、新人のクロイです。」
「お前、いつの間に。」
茶髪の若い兵士は、私を見下ろして、びっくりしている。
おい、上から見るなよ。
「お前が新人か。」
ひときわガタイのデカイ男は言うなり、持っていた模擬刀を、私の脳天目掛けて、振り下ろした。
げっ、また脳天直撃。
なんでこっちの人たちって、みんな頭狙うの。
私が小さいからだろうけど、日本人なら私は標準なのに。
それも今度は木刀じゃなく、模擬刀って、もっと酷くない。
バシッ
私は真剣に、相手の模擬刀を両掌で挟み受けて、斬撃を防いだ。
ガタイのデカイ男は、目を瞠った後、さらに力づくで押してくる。
でもマナほど、相手の力も強くない。
私は模擬刀の刃を、両手に挟んだまま、微動だにしなかった。
「それで、配属命令書は?」
注文の多い男だ。
両手が塞がっている状態で、命令書を見せろと言ってくる。
私は、相手を押し返す力を強めた。
相手も負けじと力を強くする。
私はその一瞬で、下に体を沈ませながら、模擬刀から手を離し、横に飛びのいた。
重力補正がかかっているから出来る芸当だ。
男は一気に力が前に流れ、体がつんのめる。
横転するかと見ていると、さすが隊長だけはある。
男は踏ん張ると体制を立て直した。
私はその隙に、和紙を出して、ガタイのデカイ男の目の前に掲げた。
「これが配属命令書です。」
訓練場は一瞬にして、シーンと静まり返った。




