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18.腕試し

 私がチーズケーキを食べ終わると、瞬く間にテーブルが片付けられ、有無を言わさず、全員が庭にでた。


 まさかここで、腕試しですか?

 私、剣を持ったことが、ないんですけど。

 どうしよう。

 私がおろおろしていると、先程の老執事さんが、木刀を持って現れた。

 それをマナと私に渡してくれた。


 私は木刀をまじまじと見つめた。

 やばい、ここはやっぱり、本当のことを言った方が・・・。

 私はそう思って、マナの方を見ると、彼女はもう木刀を試しに振ると、すでに構えていた。

 さすがに、今更、出来ませんとは、言えない雰囲気が、あたりに濃厚に漂っていた。

 しかたがない、ここは無様に、木刀で叩かれるしかない。


 私は意を決して、剣を構えた。

 私が構えた途端、マナから鋭い打ち込みがあって、あっという間に、木刀を飛ばされた。

 気がつくと、次の一撃が、私に向けて、放たれていた。

 それは、私の脳天目掛けて、イッキに振り下ろされた。


 うそでしょ。


 頭って、そりゃ、身長があるけど、ひどすぎる。

 思わず慌てて、相手の木刀を両掌で挟み受けて、斬撃を防いだ。

 幾らなんでも、木刀だ。

 場所が場所だけに、当たれば、かなり痛い。

 マナは、私が木刀を両掌で挟み受けたので、それを引き抜こうと力を込める。

 でも私も離さなかった。


 いくらなんでも、木刀で叩かれるのなんて、ぜったいに嫌だ。

 二人は、木刀を介して、そこで力比べをすることになった。

 どちらも、一歩もひかない。


「そこまで!」


 先程の老執事さんから、声がかかった。

 私は、ほっとして、木刀から手を離した。

 気がつくと、見学していた公爵夫婦に、先程マナと一緒にいたグリムと呼ばれた男性からも、拍手を貰った。


「すごいわ。マナを相手に、”真剣白刃取り”なんて、すばらしい。思わず、お父様を思い出してしまったわ。」


 へっ、”真剣白刃取り”って、いや、単に、脳天直撃がいやで、木刀を手で掴んだだけなんだけど。

 本当に、偶然なんです。

 やばい。

 これは早く、誤解を解かないと。


「あのー。今のは本当に、単なる偶然なんです。たまたま・・・。」

「まあ、やっぱり、お父様の同郷の方は、なんていったかしら・・・。」

 公爵夫人であるスズは、言葉が出てこなくて、老執事であるルドルフを見た。

「奥様。大和撫子でございます。」

「そうそう、その大和撫子ね。奥ゆかしいわ。本当にすばらしい。」


 いやー、違うから。

 奥ゆかしいとかじゃなく、本当に偶然なんです。

 私の涙目は、誰にも通じない。

「ですから、私は本当に、まだまだなんです。かえって、他の方に、教えていただきたい、くらいなんですから。」

 私は自分の本当の気持ちを力説した。


「君は本当にすばらしいな、黒子。私とこれだけの勝負をしておきながら、まだまだ、剣の道を究めようとは、うんうん。流石、御爺様の同郷だけはある。」

 かえって、マナは感心してくれた。

 

 えーん、なんで誰も、私の話を聞いてくれないのよ。

「ですから、私は王都守備隊に入って、もっと・・・。」


「そうだったな。さっきは笑ってしまって、すまなかった、黒子。君の腕は、すばらしい。ぜひ王都守備隊に入ってくれ。君の入隊を歓迎しよう。」

「へっ?」

 今、入隊を歓迎しようとか、いわれたような。


「ああ、言ってなかったね。私は、王都守備隊と近衛を統括している将軍職をやっているんだ。でっ、私の隣にいるグリムが副将軍をしている。」

「副将軍のグリムだ、宜しく。なんなら、君の腕だ。近衛騎士でもかまわないが。」

「うむ、たしかに近衛騎士でも、いいかも知れないな。」

 ちょっ、冗談でも、そんなお堅い職場は、給料が高くても、絶対にごめんだ。

 へたに入ると、身分がない庶民の私は、いじめにあう。

「いえ、王都守備隊で、お願いします。」

 私の声に、マナは、非常に、残念そうに答えた。

「そうか、近衛騎士なら毎回、私と手合せできるぞ。」

 私は、それを聞いて、ぜったい断ろうと思った。

「いえ、私は庶民を守る、王都守備隊でいいです。」


「まあ、やはりお父様の同郷の方ね。貴族より、弱い立場の庶民を守るなんて、素晴らしい心意気ね。」

 なんだか、ますます誤解が・・・。


「確かに、すばらしい。なんでしたら、私が王都守備隊に出向きまして、剣の指南をいたしましょうか?」

 老執事のルドルフの言葉に、何故か私以外の全員が目を剥いていた。

「まあ、なんてこと。今まで誰も、弟子をとらなかったルドルフに、そんな事をいわせるなんて、すばらしいわ、黒子。ぜひ、そうしなさい。」

 公爵夫人であるスズの言葉に、何もいえず。

 ただ私は、そのまま、素直に頷いていた。


 後になって、知ったのだが、老執事のルドルフは、かつて伝説の名剣士という名をほしいままにした、この国の英雄の一人だった。


 ゆえに、当然、重力補正が入っている私でも、辛い修行の日々が待っていた。


 なんで、いつのまに、こんなことに、なったんだ。

 だれか、教えて下さい!


 剣の道は一日にして、ならず。

 ただ、修行があるのみでした。

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