16.午後の紅茶
「まあ、この世界で魔力がないというのは、父を見てきたから言えるが、本当に大変だよ。」
私は、真っ白なテーブルクロスがかかっているテラス席で、スズという一人の妙齢のご婦人から、昔話にかこつけた、魂をえぐられるような、拷問にあっていた。
今はもう、魂も抜けて、脱力している。
確かに彼女の話には、納得するしかない。
魔力がないとメイドの仕事一つでも、本当に満足にできないからだ。
私は、今後の仕事を、改めて考えさせられていた。
いったい、なんの仕事だったら、出来るのだろうか?
そう言えば、彼女の父は、私と同じ魔力がなかったはずだ。
なんの仕事をしていたのだろうか?
ふとそう思ったので、直接聞いてみた。
「一つ質問なのですが、当時、スズ様のお父上は、なんの仕事をしていたのでしょうか?」
私の素朴な疑問に、スズではなく、その夫であるクリスが答えてくれた。
「まあ、いわゆる傭兵だね。」
「傭兵!」
「ああ、まだあの当時は、今ほど治安が良くなくってね。なので当時、僕の亡くなった父が、領地を守るために、傭兵団を組織したんだ。その時、スズの父であるをジロウ様も参加下さって、いろいろ助けてもらったよ。かなり悔しいが、本当に腕の立つ剣技の持ち主だったよ。」
クリスは憧れとも、くやしさともとれる眼差しで、遠くを見ていた。
隣では、その伴侶であるスズが父親を褒められて、嬉しそうに頷いている。
傭兵か。
そうなると、平和時の今は、兵士になるのが一番いいのかも知れない。
泥棒を捕まえたりとか、街の巡回なら、魔力がない自分でも、なんとかなりそうだ。
それに泥棒に逃げられても、俊足で怪力の私なら、なんなく捕縛できる。
私が急に黙り込んだので、にんまりした顔で、妙齢のご婦人であるスズが、私に声を掛けて来た。
「なんだい、兵士にでもなるつもりかい?」
私は頷いた。
ここは素直に頷いて、どうすれば兵になれるか、知っておく方がよさそうだ。
「はい、今のお話を伺うと、どうやら一番、兵士の職が向いていそうなのでそうしようかと考えています。ちなみに、どうすればなれるのでしょうか?」
「近衛兵にかい?」
「いえ、街を守る王都守備隊の方です。」
私の回答に、二人は目を剥いた。
「王都守備隊は、それほど給料は高くないよ。」
「ですが、近衛というのは普通、貴族の身分があるような人が、なるのはないですか?」
「まあ、そうだね。本人がもっいていなくても、近衛になるには、貴族の紹介状は最低限必要になるね。」
やっぱり。
「でも、王都守備隊なら、そこは問われないのでは?」
「確かに必要ないね。でも、逆に、腕が必要になるよ。」
値踏みするような目で、私はスズに見つめられた。
「腕があれば、後は何もいらないということでしょうか?」
私の質問に、二人は頷いた。
「なら、大丈夫です。」
私の断言に、部屋の中から、大笑いしながら、茶髪で美しく黒い瞳を輝かせた女性が、現れた。




