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15.公爵夫人現れる。

 私が、ナニ1号と2号を捜して、目線をうろうろさせていると、執務室の一角に、ログハウスの庭にあったような綺麗な模様が、突然、浮かび上がった。

 見ていると、それが光出して、なんとそこから、妙齢のご婦人が現れた。


「まったく、ここはシールドが強固で面倒だね。」

 ルークがその妙齢のご婦人を見て、目を瞠る。

「おばあ様!なんで、毎回、毎回。ここに来る時に、王宮の結界を破壊して、入ってくるんですか。」

「なんでって。いくら言っても、お前がなかなか、客人を連れて来ないせいだろう。」

 よく見ると、ホークと違い、白髪で細いが、女性にしては、しっかり筋肉がついた、綺麗な顔だちの妙齢のご婦人だった。

「俺が言ってるのは、そんな事じゃなくて。なんで馬車で、王宮の正門から、入って来ないのかと、聞いているんです。」

「決まってるだろ。時間がかかって、面倒だからだよ。」

 そう妙齢のご婦人は答えると、何故か彼女は私を見た。


「ああ、父が言っていた通り、本当に黒髪に黒い目なんだね。」

 そう言うと、私の腕を掴んで、彼女は指を振った。

 指を振られた途端、私の周囲を光が舞った。


 気がつくと、宰相室から落ち着いた雰囲気の日本庭園にいた。

 うそ、異世界から帰還できたの?


 一瞬、喜んだのも、つかのま、隣の妙齢のご婦人に引っ張られて、後ろを振り向くと、そこには立派な洋館が建っていた。

 屋敷の中からは、メイド服を着た人たちが、こっちに向かって、歩いて来る。

「ここが私の家だ。そうそう、君を愛犬の場所に、案内しよう。」

 そう言うと、屋敷から出てきたメイドさん達を無視すると、先に立って、スタスタと歩いていく。

 そう言えば、すっかりプーの事を失念していた。

 夫人について、日本庭園から西洋の迷路ような庭を抜けると、そこでは我が家の愛犬プーが、綺麗な美しい毛並みの同じような大きさの犬を口説いている姿が、そこにあった。

 私が呆気のとられて、それを見ていると、夫人が説明してくれた。

「ああ、あの犬は、長女が飼っている犬でね。結構かわいいだろう。そう言えば、あの二匹は、ここに着いた時から、あんな感じだよ。」

 見ると二匹の妖精に、何か言われるたびに、プーはその通りに、行動しているようだ。

 毛並みを舐めたり、餌を差し出したり、最後はお腹を見せて、絶対服従をして見せている。

 あのアホ犬、人様の犬の前で、何をやっているんだ。

 私は思わず、額に手を当てたくなった。


 しかし、あれは何の行動なんだ?

 いったい我が家の駄犬は何がしたいのだろうか?

 さっきから、見ているが、相手の犬から無視されっぱなしだ。


 私が近づくと、妖精二匹の会話が聞こえてきた。

「おかしいわね。魂の半身なんだから、今ので、落とせるはずなんだけど?」

「そういえば、僕もああやって、バイオレットに求愛したっけ。」

 どうやら一連のプーの行動は、この妖精たちによる作戦のようだ。

 しかし普通、犬にあの求愛行動は、ないだろう。

 もうちゃっと、違う方法の方がいいんじゃないのか。


 私がそう思ったが、取り敢えず、自分の愛犬を呼んで見た。

「プー、プー。」

 呼ぶが、無視された。

 そもそも聞いているそぶりもない。

 全く、私が大きな溜息をついていると、夫人から声がかかった。


「まだまだ、かかりそうだから、愛犬は妖精に任せて、われわれ人間は、午後のお茶にしよう。」

 夫人はそう言うと、またスタスタとそこから見えるテラスに向かって、歩いていく。

 私は諦めて、夫人の後に従った。

 テラスに入ると、ちょうど部屋の中から、白髪できれいな緑瞳の美麗な壮年の紳士が、出てきた。

「クリス。」

 夫人がそう呼ぶと、壮年の紳士が嬉しそうに、微笑んだ。

「スズ。ここにいたのか。」

 クリスと呼ばれた壮年の紳士が、スズを抱き寄せて深く口づけると、しばらくたってから、ふと私を見た。

「こちらは?」

 どうやら二人に、私の存在は忘れられて、いたようだ。

 にが笑いを浮かべたスズによって、私はクリスに紹介された。

「お客様だ。亡くなった父と同郷のものなんだ。」

 クリスは、目を丸くした。

「確かに、亡くなった義父と同じ故郷のかたのようだね。」

「そうなんだ。本当に懐かしい。まるで、父と話しているようだよ。」

 そのスズの言葉を聞いて、なぜか今度はクリスが、苦笑いを浮かべて、小さく呟いた。

「本当にファザコンだね、君は。」

「なにか言ったかい、クリス?」

「いや、なんでもないよ。」


 そこに後ろから、白髪でこちらも壮年の黒の執事服を着た紳士が、三人に声をかけた。

「奥様、旦那様。それにお嬢様。お茶の支度が出来ております。こちらへ。」

 私は、お嬢様といきなり呼ばれて、ぎくしゃくしながらも、執事さんに促され、午後の紅茶が用意されて、テーブルの席についた。

 

 でも、28歳の私を”お嬢様”って、ここはもしかして、執事喫茶か!

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