14.王宮でメイドに挑戦する。
メイド長は、私を連れ途中、シーツとカバーをリネン室で受け取ると、それを持って、直ぐ近くの部屋に向かった。
部屋に入ると、しわくちゃになっているベッドに案内される。
そして、何も説明されずに、シーツとカバーを手渡された。
私は黙って、それを受け取ると、まず、布団をめくった。
すぐに、ベッドのシーツを外し、布団のカバーも剥がした。
次に、ベッドにぴんとシーツを掛けると、新しいカバーを布団にかけ、あっという間に、ベッドメイキングを終わらせた。
メイド長を見ると、静かに頷いている。
どうやら合格のようだ。
それが終わると、メイド長に連れられて、次の部屋に向かった。
部屋に清掃道具が置いてあった。
メイド長が高い所を掃除するハタキと掃除機を渡してくれた。
私はハタキを受け取って、高い所から低い所へごみを落としていった。
最後に掃除機で掃除しようとして、スイッチに手を触れる。
動かない。
何度も押すが、全く反応しなかった。
見かねて、メイド長が、スイッチを入れてくれた。
私は動き出した掃除機を使って、四角い部屋を丁寧に、隅々まで掃除した。
メイド長を見ると、静かに頷いている。
今度は洗濯室に連れて行かれた。
部屋に入ると、たくさんの洗濯物がカゴから溢れていた。
私は、洗濯物を無地のもの、色物、手洗いが必要なものに仕分けした。
洗濯機に、まずは無地のものを入れて、スイッチを押した。
やはり反応しない。
私の顔を見て、大きな溜息をつくと、メイド長がスイッチを入れてくれた。
私が触るとスイッチが入らず。
メイド長が触るとスイッチが入る?
「なんで?」
「取り敢えず、洗濯を続けて。」
メイド長の言葉に、私は洗濯機に無地の洗濯物を入れて洗濯を回した。
そして、その間に、手洗いが必要なもを、傍に置いてあった石鹸を使って、洗う。
直ぐに無地者の洗濯が終わり、色物を入れて洗濯をする。
その間に、手洗いの洗濯物をすべて洗い終え、洗濯が終了したものを、カゴに詰めた。
メイド長に案内され、いっぺんに洗濯物を入れたカゴを持って、干し場に、向かった。
「重くありませんか?」
私がかなりの重さの洗濯物をいっぺんにを持って、普通に、メイド長の後について歩いたもので、彼女に質問された。
「はい、問題ありません。」
私は質問に答えながら、普通メイド長の後に続いた。
彼女からそれ以上の質問はなかった。
「ここです。」
メイド長は、裏庭にたくさんロープが張られた場所に私を連れていった。
どうやら、ここに洗濯ものを干すようだ。
私は大物のシーツを手早く広げると、皺を取り、次々に干していった。
小物もきちんと皺を伸ばして、全て欲し終えると、メイド長を振り返った。
メイド長は、最後に厨房によると、ワゴンに入ったお茶を持って、私について来るように言った。
私は頷くと、その後ろに従った。
メイド長は、最初尾と訪れた、宰相の執務室に、私を連れて来た。
「紅茶を二つお願いします。一つはミルクで、もう一つはストレートで。」
私は頷いた後、ハッとした。
お湯が冷めている。
温めようにも、クリスタルに炎を灯せない。
「あの-、メイド長。」
私はおずおずとメイド長を呼んだ。
「なんですか?」
メイド長が訝しげに、私を見た。
私はしぶしぶ口を開いた。
「クリスタルに炎をお願いします。」
メイド長は、最初、口をあんぐり開けた後、私が差し出した道具に乗っていた、クリスタルに炎を灯してくれた。
私は灯された炎を使って、お湯を温め直すと、カップを温めてから、紅茶を蒸らし、ミルクとストレートの紅茶を入れた。
ミルクを入れる時は、サービスして紅茶とミルクを同時に注ぐ、妙技も披露して見せた。
ホークも、メイド長も、目を瞠って見てくれて、少し優越感にひたれた。
どうだ、すばらしいだろう。
褒めてくれても、罰が当たらんぞ、諸君!
貧乏人だった為、色々なバイトを経験したのは、伊達じゃない。
私は得意げに、二人に紅茶を出した。
メイド長にストレートを、ホークにミルクを。
メイド長が質問してきた。
「なぜ、私がストレートなんですか?」
メイド長の質問に、私は答えた。
「アイリーン姫と宰相様が、つい先日、お茶を召し上がっていた時に、宰相様は、ミルクを飲んでおられましたので、ミルクにしました。」
メイド長の顔に、笑顔が見えた。
やったぁー、これで就職をゲッドだ。
私は心の中で喝采した。
メイド長が徐に話し出した。
「今の所、99%合格ですが、宰相閣下、一つ質問です。」
「なんだ?」
宰相はいつの間にか、ソファーに座って、私が入れたお茶を飲んでいた。
「彼女の魔力値は、どのくらいなんでしょうか?」
「ゼロだ。」
ホークはこともなげに答えると、紅茶をもう一口飲んだ。
「はっ、なんですって?」
「だから、ゼロだと言っている。」
「修行すれば?」
「修行しても、変わらん。」
メイド長は、唖然とした後、厳しい顔で宣言した。
「不合格です。」
「なんで?」
メイド長は、長々と説明してくれた。
照明のスイッチ、クリスタルに炎を灯す、洗濯・掃除機、その他もろもろには、全て微力ながら魔力が必要らしい。
それが使えない私は、メイドとして失格と言われ、何も言えなかった。
それと同時に、私は気がついた。
魔力ゼロの私は、一人では照明がつけられず、ご飯を食べるにも、クリスタルに炎を灯せないので、料理を作ることも出来ない。
それどころか洗濯も掃除も、一人では何も出来ないということだ。
おい、妖精王。
こんな状態で、私にどう生活しろというんだ。
せめて微力な魔力を、自動で流せる道具くらい、特典でつけるべきだろう。
私は妖精王のお使いのナニ1号とナニ2号に、文句を言おうとして、ハッと気がついた。
あいつら、どこに行った?
敵前逃亡か?




