13.王宮
私とホークが食べ終わっても、二人は見つめあったままだった。
「いい加減に、食べたらどうだ、イアン。いらないなら、片付けるぞ。」
ホークの言葉に、アイリーン姫が恥ずかしそうに、バスケットからパンを出した。
イアンもごまかすように、バスケットから同じようにパンを出すと、干し肉とサラダを挟んで、食べ始めた。
なぜか二人とも無言だ。
モグモグしながら、食べてはお互い、見つめあって赤くなる。
最初は、面白そうに見ていたが、ここまで来ると、たいがい馬鹿らしくなってくる。
バカップルとは、良い得て妙な言葉だと思った。
私がそう考えていると、ホークが立ち上がった。
「いいか、二人とも。あと二十分したら、全員で王宮に戻る。」
「ああ、わかった。」
イアンがぼそりと食べながら頷いた。
アイリーン姫は、ハッとすると、慌てて食べると、寝室に戻って行った。
「お前は、いいのか?」
ホークはなんでか、私に聞いてきた。
私は自分の傍に置いてあるリュックを指した。
持って行く必要があるものは、これだけだ。
しばらくすると、アイリーン姫がさっきより、かなり豪華な装いのドレスに着替えて現れた。
イアンがアイリーン姫の姿に見とれて、ボウとしている。
ホークがアイリーン姫に手を差し出した。
アイリーン姫は頷くと、ホークに手を引かれて庭に出た。
私とイアンも、慌てて二人の後を追った。
ログハウス前の庭に、いつの間にか、なんだか綺麗な模様が描かれていた。
二人を見ると、その模様の真ん中に立っている。
イアンが慌てて、その模様の中に入ったので、私も同じようにその中に入った。
フワッとした感じがしたと思ったら、周りの景色が変わっていた。
「ここは?」
私はきょろきょろと周囲を見ていると、アイリーン姫が私に説明してくれる。
「王宮の庭よ。」
見ると確かに、目の前に、超がつくくらい立派な建物が立っていた。
私はそこで、ハッと気がついた。
ヤバイ、愛犬プーを忘れてきた。
私が真っ青になっていると、それに気がついたホークが声をかけてくれた。
「なにか忘れ物か?」
「プー。いえ、犬を・・・。」
「犬なら王宮ではなく、公爵家の方に転送した。さすがに、王宮に犬を連れ込ませるわかけにはいかないからな。ちなみに、屋敷では、犬も飼っているので、扱いは心得ているから心配はない。」
私はホークの言葉にホッとした。
「ありがとうございます。」
私が素直にお礼を言うと、なぜかホークは目を瞠っていた。
「なにか?」
「いや・・・。」
ホークは、何か言いかけて止めると、イアンとアイリーン姫、それに私を従えて、宰相室に向かった。
宰相室に着くと、扉前の衛兵が三人を見て敬礼すると、中に入れてくれたが、私は遮られた。
いきなり槍が振って来たので、慌ててそれを避けた。
「ちょっ、危ない。」
ホークは気がついて、ニヤニヤしながら、扉前の衛兵に、入れるように言ってくれた。
てっ、言うか、槍を振り下ろす前に、言って欲しかったんだけど、今の言葉。
ぜったい、わざとだな。
二人がまとまったことが面白くないとか?
本当は、異母兄妹だけど、アイリーン姫が好きだったとか?
私が扉前で考え事をしていると、ホークが焦れて声をかけた。
「早く、入れ!」
私は、肩を竦めて、部屋に足を踏み入れた。
中は、今まで歩いていた通路以上に、豪華な造りだった。
「すごっ。」
私の感嘆に、少し気を良くしたホークが、イアンに命令していた。
「イアン。お前は侯爵家に戻って、親父さんにアイリーン姫との婚約話を至急して来い!」
イアンは頷くと、宰相室を飛び出して行った。
次にホークは、執務机に置いてあった鈴を鳴らす。
途端に、宰相室の扉から二人のメイドが入って来た。
一人は赤毛でボン・キュ・ボンの若いメイドさんで、もう一人は、同じように赤毛だが、こちらは、細めでかなり年嵩のメイドだった。
「アイリーン姫。部屋のご用意は出来ていますので、ご案内します。」
アイリーン姫は若いメイドさんについて、部屋から出て行った。
ホークは、アイリーン姫が、宰相室から出て行ったのを見届けた後、メイド長に説明した。
「メイド長。彼女が昨日こちらで働いて見たいと言っていた娘だ。」
「畏まりました。」
私はホークを見た。
「早く行け!」
ホークは、それだけ言うと、執務机に向かって、仕事を始めてしまった。
おい、仕事を紹介する前に、普通はこっちの希望を聞くのが先だろ。
私は文句を言いたかったが、生きていくうえでは、とにかく働いて、お金を得る必要がある。
諦めて、私は促されるまま、メイド長について行った。




