12.ヘタレ男の愛の告白
早朝、事件が起きた。
アイリーン姫が目を覚まして、着替えてからドアを開けると、ドア前で呪文もとい、求婚の言葉を練習していたイアンが、彼女を見るなり叫んだのだ。
「アイリーン姫。愛しているので、責任を取らせて下さい。」
そこに偶然、王宮から、迎えに来たホークが、タイミングよくドアを開けて、リビングに現れた。
ホークはイアンの言葉に唖然とし、アイリーン姫は、彼の求婚の言葉に、感動した。
「イアン。」
アイリーン姫は頷くと泣きながら、イアンに抱き付いた。
イアンは泣き出したアイリーン姫を見て、固まっている。
ホークは予想をはるかに超えた展開に、唖然として、抱き合う二人を見つめていた。
責任って、イアン。
お前、何をしたんだ。
ホークは、アイリーン姫に抱き付かれて、固まったイアンを見つめた。
そして、抱き合う二人の後ろで、ガッツポーズをする黒子に気がつく。
詳細は不明だが、イアンは、どうやら、黒子に嵌められたようだ。
まっ、それでも二人にとっては、これ以上のことはない。
後は俺の腕次第か。
物凄く面倒くさいが、異母兄妹とイアンの馬鹿の為に、がんばるしかないようだ。
だが、いったい何がどうして、こうなったのか、後でじっくり、イアンの馬鹿に、口を割らせよう。
ホークはそこまで考えてから、目の前の二人に視線を戻した。
まだ、抱き合っているようだ。
さて、いつまで、この馬鹿者たちを放置すればいいものか。
私が二人の後ろでガッツポーズをしていると、ホークと目があった。
やばい。
私が何かしたのを、感づいたようだ。
侮れんやつだから、対策を考えておかないと、身の破滅だ。
私がそう考えていたところに、どこからか犬の吠え声が聞こえた。
わんわんわん!
どこの犬だ。
せっかくバカップルが盛り上がっているのにと思ったら、なんとそれは我が家の駄犬だった。
そう言えば、今日はまだ食事をやっていなかった。
見ると我に返ったアイリーン姫が、真っ赤な顔でイアンから離れた。
「今、食事を作るわね、イアン。」
「いや、アイリーン姫がそんなことをする必要は、・・・・・・。」
イアンがなぜか慌てて、かぶりをふる。
「えっ、でも。私がイアンの為に、作ってあげたいの。」
「アイリーン姫。」
イアンが感動のあまり、アイリーン姫の手を握った。
おおやるな、ヘタレ。
私は思わず、目をさらにして、次の展開を見たが、そこはバカップルのイチャつきにイラついたらしい、ホークによって粉砕された。
ホークはテーブルの上に、いつの間に出したのか、大きなバスケットを、ドンと置いた。
「食事ならもうありますので、作る必要はありません。」
二人は今初めて、ホークに気がついたようだ。
「ホーク、いつ来たんだ?」
イアンの素朴な疑問に、ホークはこめかみに青筋を立てながら答えた。
「ちょうどイアンが、アイリー・・・・・・。」
イアンが慌てて、ホークの言葉を遮った。
「分かった。」
イアンはホークの隣に座った。
アイリー姫もイアンの隣に、腰を下ろす。
二人はなんとはなしに見つめ合って、頬を赤らめている。
私は、呆れ顔のホークに促され、皿を戸棚から出した。
私が皿を人数分テーブルに出すが、二人は見つめ合ったままで、まったく気がつかない。
これが世に言う、バカップルなのだろうか。
私とホークは、二人を無視して、バスケットの中にあった豪華料理を出すと、食べ始めた。
昨日とは違い、焼きたてのパンが、これまたおいしい。
「うーん、絶品。」
私の足元では、我が家の駄犬が、ホークからもらった干し肉を、尻尾を振りながら、パクついている。
よほど美味しいようで、わき目もふらずに、齧り付いている。
やばい、このまま何度もホークからあの干し肉を貰ってしまうと、プーの中でのご主人様の位置が彼に変わってしまう。
私は美味そうにパクついて愛犬を見ながら、危機感に襲われた。
早い段階で、あの干し肉の入手経路を確保して、私から上げるようにしなければ。
私は食事をしながら、心の中にメモをした。




