10.露天風呂
私は、その日、アイリーン姫のログハウスに泊めてもらうことになった。
夕食は、ホークが持ってきた、公爵家の料理人が作ったという豪華料理だった。
あまり期待してはいなかったが、それなりに美味しかった。
私からすれば、ファミリーレストラン並みの味だが、二人は嬉しそうに食べている。
「ホークは気に入らないが、公爵家の料理人は、さすがに、いい腕をしている。」
イアンはしきりに、公爵家の料理人を褒めている。
見るとアイリーン姫も同じように、イアン程ではないが、嬉しそうに箸をすすめていた。
「どうかしたの、黒子?」
あまり食べていない私を気にして、アイリーン姫が声をかけてくれた。
「アイリーン姫。どうせ庶民です。食べなれないので、食欲がわかないだけでしょう。」
相変わらずの上から目線に、ちょっと腹が立つも、言い返しても、きっとこいつには、通じないので、言うだけこっちが損をする。
私は黙って、そのまま食べた。
夕食後、昨晩と同じように、姫の寝室に私とアイリーン姫、リビングにイアンが寝ることになった。
私がまた外の井戸で、水浴びしようとすると、アイリーン姫に止められた。
「こっちよ。」
アイリーン姫は、私を奥のドアに引き入れた。
中を開けると、そこには、青々とした木々に囲まれた露天風呂が広がっていた。
「なにこれ。すごすぎ。まるで高級旅館の露天風呂そのものじゃない。」
私の呟きに、うれしそうに頷いたアイリーン姫に同性同士だし、一緒に入らないと誘われ、喜んで頷いた。
ちなみに、私の周りを飛んでいた妖精二匹は、硫黄の匂いが苦手なようで、寝室のベッドの上に二匹で縺れ合っていた。
ナニしようとしてるんだと思ったが、無視することにした。
なぜか気にしたら終わりのような気がしたのだ。
すぐにアイリーン姫に現実呼び戻されて、私は着替えを持つと、露天風呂に入った。
「うーん、気持ちいい。でもなんで、ここに露天風呂があるの?」
私が不思議に思って尋ねると、アイリーン姫が、大きな胸を洗いながら、答えてくれた。
「ここ、もともとホークの持ち物なのよ。」
アイリーン姫からそう告げられたが、それがこれとどうつながるのか、全く理解できなかった。
「ホーク宰相の持ち物と露天風呂がどうつながるの?」
「えっと、ホークの四代前のご先祖様が、異世界人だったの。」
アイリーン姫のびっくり告白に、さすがの私も絶句した。
「ホーク宰相は、とても日本人には、見えないけど?」
「えっと、何代か後になると、あまりそういう特徴がなくなって、こっちの世界の特徴の方が強く出るの。特に、ホークの父親は、王族なんで、ホークも外見は王家の血筋が強いようね。」
「なるほどね。」
アイリーン姫は、いつの間にか、私の傍で湯船に浸かると、そう話してくれた。
「そう言えば、このログハウスから帰る間際に、政略結婚がどうとか言っていたけど?」
「ああ、まあ。私、これでも王家で5番目の姫なの。なんで、そろそろ政略結婚の話が出てもおかしくはないのよ。」
アイリーン姫は、項垂れて話してくれた。
「でも、相手がかなり年上で、出来れば断りたいんだけど、きっと無理ね。」
「あの切れ者宰相に頼めば、何とかなるんじゃないの?」
「うん、ホークに言わせれば、その男との政略結婚がいやなら、イアンと同衾しろって、言われたんだけど、・・・・・・。」
アイリーン姫がそう言って、顔を真っ赤にすると、いたたまれなくなったようで、温泉を出て、部屋に走って行った。
イヤもなにも、アイリーン姫にそう言われたら、真っ赤になって、頷きそうだけどなぁ、あの男。
私がそう考えていると、アイリーン姫が戻って行った部屋から、悲鳴が聞こえた。
「キャー、見ないで。イアンの馬鹿!」
何が起こったんだろうか?
私は湯船から上がって、ゆっくり着替えてから、悲鳴が聞こえた、部屋に向かった。




