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01.散歩中に異界の穴に落ちました。

 私の名は、黒井黒子。

 年齢28歳、身長160cm、体型は一般日本人女性より、やや太り気味だ。

 なので、休日には、愛犬プーの散歩を欠かさない。

 愛犬の犬種は、小型のプードルなので、家族はめんどくさがって、プーと名付けた。

 犬は飼い主に似ると言うが、こいつは家族が太り気味の割に、ちっさくて、細い嫌味な体型をしている。

 主食は、ドッグフード、それも高級半生が好みで、安いものを買ってくると、見向きもしない高級グルメ犬だ。

 犬のくせになまいきだ。

 今は季節的に寒いので、夕方ではなく、主に昼間に散歩をしている。

 今日も夕方寒くなってから、散歩に行くのが面倒くさかったので、ぽかぽかしている昼に行った。

 田舎なので、あまり人通りもなく、私とプーはのんびり、線路沿いの道を歩いていた。

 その時突然、プーが目の前から消えた。

 ハッとした時には、自分の足元にあったはずの道も消えていた。

 私とプーは、そのまま見えない穴の中に落ちた。


 ドヒャー ギョェー ヒョェー

 キャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャン


 ドシャ ベチャ


 私とプーは、何かの植物の上に落ちた。

 右手をつくと、手に緑色の液体がベチャッとついた。

 ヌルついたその液体を払う。

 プーは信じられないことに、体を振って、それを飼い主である私に飛ばした。

 おのれ、後で憶えていろ。

 今日の夕食は、バーゲンの安ドッグフードにしてやる。

 私は、心に誓いながら周囲を見た。

 周囲には、これまで一度も見たこともない植物で、覆われている森が、広がっていた。

 いかん、仕事のし過ぎで、白昼夢を見るようになったようだ。

 私は深く息を吐くと、落ち着いて、もう一度、周囲を見た。

 やはり周りは、うっそうとした植物が生い茂った森だった。

 気温も冬の寒さから、真夏の暑い気候に変わっていた。

「さて、どうしたものか。」

 私が途方にくれていると、プーが踏みつぶした植物の枝先に咲いていた花から、はみ出した何かをひっぱって、引きずり出すと、それを舐め始めた。

 また変なものを舐めて、お腹をこわされると厄介だ。

 私はプーが舐めているものを、取り上げようと、愛犬に近づいた。

 それは何か音を出していた。

 虫かなんかか?

 また厄介のものを食べようとするなぁ。

 私が取り上げようとすると、プーはもっとしつこく、それを舐めはじめた。

 一体、何がそんなに美味しいんだ。

 私はそれを見た。

 それは、なぜか人間の女性の姿に、似ていた。

 ハッ、人間。いやいや、ありえんだろ、それ。

 こんなちっさい人間がいたら、それこそ、私の頭がおかしくなっている証拠だ。

 まだ仕事がきついからって、精神科に通うほどじゃないはず・・・。

「イヤーン。もう舐めないで、感じちゃう。あああああ・・・・・・。」

 えっと、小人サイズの巨乳の金髪美女さんが、我が家の愛犬に舐めまくられて、喘いでいるように、見える。

 やばい、本格的に医者に通った方が、いいみたいだ。

 私は、メガネをはずして、持っていたメガネふきで、レンズをきれいにすると、恐るおそる、その物体を見た。

 よし、今度はそんなものは、見えないはずだったが、同じようにちっさい人間がそこにいた。

「イヤーン、もう舐めないで、いっちゃう!」

 私は、何かわからないが、慌てて、プーからそれを取り上げた。

 プーは一瞬キョトンとした後、また傍の花の匂いを嗅ぎだした。

 なんか甘い匂いでもするのか、その花。

 私が見ていると、プーはまたその花から突き出ている何か引きずり出すと、舐め始めた。

 またちっさいサイズの金髪美女かと思いきや、今度は、ちっさいサイズの金髪のイケメン君がそこにいた。

 我が家の愛犬は、またそのイケメン君を舐めはじめる。

「う、うっ、やめて、くれぁーー、はっ・・・・・・。」

 何かの喘ぎ声が聞こえる。

 なんだかわからないが、慌ててプーからそれを取り上げようとするが、敵もさるもの、今度は取り上げられない様に、主人の行動を見て、態勢を低くしている。

 下手に動くと、それを咥えて、どこかに行きそうだ。

 私は仕方なしに、ポケットをごそごそすると、持っていた犬用おやつを取り出した。

 プーの目の色がきらりと光り、お座りの姿勢になる。

 私は、プーが舐めていたものを回収した後、お手をさせてから、それを与えた。

 プーは嬉しそうに、それに噛り付いている。

 さて、この小人をどうしたものか。

 私は手のひらに乗せた、二匹の小人を見ながら、途方にくれた。

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