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恋路
《恋路》
打ち捨てられた舎に舞う
魂に紛うは蛍火の
立待月に誘われ
図らず払う 常世の帷
冥い隧道抜け往けば
耳に入りし潮騒の
重ねしは唯、愛の波
繰り返せしは我が身の空ろ
未だ惑うは君か我か
澪標想い揺らぎはせず
君待つ波の向こうがわ
惑わぬように掲げた灯り
独り奏でし篠笛の
他に想う人無しと鳴く
絶えなば絶えね玉の緒よ
よもや忍ぶにあたわずや
我に応うは誰か君か
濡れにぞ濡れし馴れ袖も
涙誘う眩惑の中
二人の恋路 その夜は明けじ
君と並ぶ 夜の丘に
やがて真白な日は昇り
露と散りし恋の名残
永久に思えた夢の終り