レオン視点
『魔族の国に行く手助けをしてほしい』
聖女ーーリンの言葉を聞いたレオンは笑っていた。
マリーの死で今にも壊れそうだった女はもういない。
執務室で腕を組み景色を見るレオン。
「シルフィ」
「なんでしょうか?」
レオンは自身の侍従であり副官、シルフィへ視線を向ける。
クリーム色の髪、垂れ目の優男風な外見をしているが、シルフィの赤い瞳が侮れない男だと物語っている。
「叔父上に使いを送れ」
「!…まさか」
「ああ、例の件進めるぞ」
感情を表に出さないシルフィだったが、レオンの発言に喜んでいるのが見て取れる。
「その前にやってほしいことがある」
ルミナス城周辺地図を用意させ、印を付ける。
「こことここ、ここにも今から指示する仕掛けをしろ」
「これは…?」
意図の読めないシルフィは首を傾げる。
そんなシルフィにレオンは楽しそうに口を開いた。
「聖女様を我らが国に亡命させる手助けだ」
「…私が聖女をお連れしましょうか?」
「いや、一人で行動してもらう」
「!!」
シルフィは驚愕しレオンを見る。
それもそのはず、黒の森を一人で通過するには危険すぎる。
方向を見失いやすい上、アルベルトが兵を派遣するのは想像に難くない。
「……それでは」
シルフィは聖女が黒の森で死ぬ未来しか思い浮かばなかった。
しかし、レオンの視線は最初からそこを見ていない。
「ここで死ねばそれまで。
だが…。あの女はキレてるからな」
レオンの言うことが理解できないシルフィ。
しかし、今に始まった事ではない。
更にレオンの予想は当たるのだ。
不思議そうな顔のシルフィにレオンは続けた。
「ああいう女が怒ったら、最も手が付けられん」
「…では私は仕掛けを施しながら魔王様へ謁見しに参ります」
「頼んだぞ」
シルフィが音もなく去ったのを見送り、レオンは椅子に深く腰掛ける。
マリーが死んだ日のリン。
自分に助けを乞うたリン。
瞳の強さが、雰囲気が別物だった。
あれが、あの女の本性だったのか。
「面白い」
必要なものはくれてやる、好きなだけ暴れるといい。
レオンはこれから起こるであろう騒動に、胸を躍らせるのだった。




