庭園
誰が手入れをしているのか、庭園は花が咲き乱れ、緑に満ちていた。
風を受け空を見上げる。
私の見える視界は現実世界と変わらない。
暫く歩いていると人の気配がした。
「マリー?」
油断していたんだろう。
この庭園には人がいないと。
白銀の髪に赤い瞳。
三次元にいたら違和感があるだろう組み合わせを調和させているのは、美しい顔か男の纏う雰囲気か。
そんな美しい男が目の前にいた。
「……誰?」
警戒し距離を取ろうとジリジリと後退する。
男は私を真っ直ぐ見つめ眉間に皺を寄せた。
「お前が聖女か?」
男の雰囲気と表情から良く思われていないと思った。
どうすれば良いのか、視線を彷徨わせる。
「私が聖女だと国王陛下は言ってました…」
「そうか」
口数が少なく威圧感があり、近くにいる私は自然と汗ばむ。
逃げても良いのか考えあぐねていると、男は再び口を開いた。
「こんな女に何ができる」
私に言っているのかわからない。
男は興味がなくなったかのように私から視線を逸らした。
恐怖でその場から動けずにいる私の横を通り過ぎその場を去っていった。
去り際に聞こえた言葉。
『アルベルトには気をつけろ』
たぶんそう言った。
なんのことかわからず、私は立ち尽くすしかなかった。
恐怖が体から抜けきるまで庭園で過ごした。
気持ちの良い午後だったのに、気がつけば夕暮れだ。
西陽が庭園を照らし、何故か悲しい気持ちになった。
いい加減に戻らないと、マリーが心配する。
そう思い、部屋へ戻るためホールに入った時。
「聖女様」
呼び止められ振り向くとローデリヒがいた。
相変わらずの冷たい目に気後れする。
「国王陛下がお呼びです。
このまま私についてきてください」
「え?…マリーに伝えないと…」
「国王陛下の元に件の侍女もいます」
そう言うとローデリヒは踵を返し、歩き始めた。
私はついて行くことしかできなかった。




