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マークス

マークスが部屋を訪れて以降、ギフトの授業が始まった。


「おや?リンさん、それはりんごですか?」


【想像】を使用し目の前のリンゴを作る課題。

なのだが…。


私の目の前には赤いグニャグニャした何かだった。

何度やっても結果は変わらない。

そして作ったものも、数秒も経たずに霧のように消えていく。


「はぁ、もう一度初めからやりましょう」


「頑張ってください!リン様!」


マークスのため息もマリーの励ましも毎日のルーティンになった。

自分の不甲斐なさに落ち込む。


「いいですか?魔力と異なり、ギフトは聖力を使用します」


マークスは何度目かになるギフトの使い方を説明してくる。

耳にタコ、疲れた私はマークスの言葉が耳に入ってこない。


「ふふふ。マークス様。

リン様はお疲れのようです。

休憩されませんか?」


マリーの優しい鶴の一声に、マークスは再びため息を吐き椅子に座った。


「見本を目の前に置いてるのに、何が足りないんでしょう」


マークスの独り言に応えられる人はここにいない。

私はマークスをジト目で見る。


「な、なんですか?」


「先生って人種はみんな一緒だなって」


マリーは笑いながら私の目の前にお茶を置いてくれる。

いつもながら良い香り。


「ほう?他に先生がついていらっしゃるのですか?」


マークスの問いかけにマリーは首を横振った。


「元いた世界でお世話になったの。

私が嫌な目に遭った時、助けてくれようと必死だった」


中学校の恩師を思い出す。


「リン様を相手にするなんて、その先生もさぞ大変だったことでしょう」


マークスはわざとらしく顔を横に振り残念な表情を見せる。


「どうせ私は落ちこぼれだよ」


「何言ってるんですか」


マークスは笑顔で私を見る。


「手のかかる子ほど可愛いものですよ」


「…マークスさん」


「限度はありますがね」


「マークスさん!」


マークスとの気軽いやり取り、それを見て笑うマリー。

異世界に来た時は不安でいっぱいだったけど、なんとかなりそうだ…。


「少し気分転換に散歩してきても良いですか?」


私の提案にマークスはシッシといったジェスチャーをする。

マリーも同行しようとしたが、私が制止した。


「すぐ戻るし、マリーはここでマークスさんの相手しててよ」


私が住んでいる部屋は離れのような作りになっていて、庭園も付いている。

外からは見えず、城の中でも特別に静かな場所だ。


他の人間は怖いが、ここにはあの二人しかいない。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃいませ」

「ごゆっくり」


二人の送り出す声を背に、庭園へ向かった。

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