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異世界特区「トーキョー」なんでも相談屋  作者: 文助
第1章 プロローグ

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5/8

05

 店に戻ると、俺はカウンターに座り、再び茶をすすった。

 エルーシアとリゼットは、椅子に座ったまま、呆然としている。

 沈黙が、店内を支配していた。


「……ねえ、クロさん」

 しばらくして、リゼットが口を開いた。

「あたしたち、これからどうすればいいの?」

「さあな」

「さあなって……!」

「とりあえず、都市は無事だ。インフラも機能してる。食料も、当面は備蓄がある」

 俺は、適当に答えた。

「だから、慌てる必要はない」


「でも……」

 エルーシアが、不安そうに俯いた。

「ガストンさんたちも、教会の皆さんも……」

 そうか。

 こいつら、仲間と離れ離れになったんだな。


「そいつらは、元の世界にいるんだ。大丈夫だろう。それよりも.....」

(……そういえば、こいつら行く当てないよな)

 俺は、ふと気づいた。

 勇者一行として、この街に潜入してきたんだ。

 当然、この街に家も、知り合いも、金もない。


「……お前たち、泊まるところあるのか?」

「え……?」

 二人が、顔を上げる。

「泊まるところ……ないです」

 エルーシアが、申し訳なさそうに答えた。

「金は?」

「それも……」

「そうか」

 俺は、ため息をついた。


 やれやれ。

 面倒なことになった。

「二階に空き部屋がある。とりあえず、そこに泊まれ」

「え……!?」

 二人が、同時に驚きの声を上げた。


「で、でも、そんな……!」

 エルーシアが、顔を真っ赤にした。


「いいの、クロさん?」

 リゼットが、じっと俺を見つめてくる。

「面倒だから、さっさと決めるぞ。嫌なら他を探せ」

「い、いえ!ありがとうございます!」

 エルーシアが、慌てて頭を下げた。

「……じゃあ、お言葉に甘えるわ」

 リゼットも、頷いた。


「よし。じゃあ、案内する」

 俺は、二人を連れて、店の奥へと向かった。


 二階の空き部屋は、小さいが清潔だった。

 二つのベッドと、小さなテーブル。窓からは、下町の通りが見える。

「わあ……」

 エルーシアが、部屋を見回して、感嘆の声を上げた。


「綺麗な部屋、ですね」

「まあな。使ってなかっただけで、掃除はしてある」

 俺は、適当に答えた。

「とりあえず、ここで休んでくれ。夕飯は俺が作るから」

「あ、あの!私も手伝います!」

 エルーシアが、慌てて声を上げた。


「お世話になるのですから、何かお手伝いを……!」

「いや、お前、料理できるのか?」

「え……」

 彼女が、言葉に詰まる。

「……できるように、頑張ります」

「そうか。じゃあ、また今度な」

 俺は、苦笑しながら頭を掻いた。

「ありがとうございます……!」

 エルーシアが、満面の笑みで頭を下げる。


 その笑顔が、妙に眩しくて。

 俺は、思わず目を逸らした。

「じゃあ、ゆっくり休んでくれ」

 そう言って、俺は部屋を出た。


 階段を降りながら、俺は内心でため息をついた。

(やれやれ、どうしてこうなった)

 元魔王の俺が、勇者と同居とか。

 しかも、都市ごと地球に転移とか。

(まあ、バレなきゃいいだろう)


 とりあえず、正体を隠し通せば問題ない。

 それに、なんとかなるさ。

 いつだって、そうやって生きてきた。

(とりあえず、飯の準備でもするか)

 俺は、店の奥へと向かった。

 こうして、元魔王と元勇者の、奇妙な共同生活が始まったのだった。


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