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第一話 きさらぎ駅のコインロッカーベイビー①

 まばたきをしたら、景色が変わっていた。

「えっ?!」

 防人(さきもり)浮草(うきくさ)、今年度から小学三年生。今日は金曜日なので、家族と共に週末の食料品や使い終えそうな消耗品を買いにいく。その帰り道の夕暮れ時。晩ごはんも土日の献立も楽しみな、いつもの、普通の、日常だったはずなのだが。

 まばたきをしたら、景色が変わり、手に持っていたエコバッグが消えていた。両脇にいた家族の姿もない。肩から斜にかけたスマホポーチはちゃんとある。浮草手作りのサカバンバスピスのちいさなぬいぐるみが、例の大流行した顔で浮草を見上げていた。

「久しぶりに、やっちゃった…?」

 やばぁ、と半笑いで浮草は周囲を見回す。

 さっきまで楽しくお喋りしながら歩いていた、商店街を背後にした四つ辻ではないが、そこは見覚えのある道だった。

 まばたきする寸前まで、鮮やかな夕焼けだったが、ここの空は雨が降らないぐらいの曇り空のような灰色をしている。雲はないのだが。

 建ち並ぶ家も、古すぎず新しすぎもしないが、人の気配が全くしない。車の音や、なにかはわからないがなにかしているだろう判別不能の生活音がない。色味も、ぼやけているような、薄いような、古いカラー写真のように色褪せて見える。

 浮草は、スマホポーチからキッズ用スマホを出して画面をタップ。だが、液晶画面はホラー映画の演出さながらにおかしくなっていて、チカチカしたり、なにかが一瞬写ったり、ノイズが走ったり、妙な低音や高音を発したり、読経っぽい音がしたりするので、脇の電源ボタンを長押しする。無抵抗で電源は落ちてくれた。そのうち勝手についたりする。スマホをポーチに戻す。ポーチの中の他の持ち物も消えていないことにホッとする。見上げてくるサカバンバスピス。見慣れた持ち物に、我知らず手を触れる。


 ここは、ふだん浮草が生きる日常とは異なる異常な異世界。




「まあ、知ってるとこだし、はやく帰ろ」




 浮草は、年齢に不相応の平静さと、年齢相応の呑気な顔で歩き出した。まるで、毎日歩く通学路を行くように。急に出てくるかもしれない、迷惑な自転車や車には注意する程度の、平然とした歩みで。

 さきほどまでいた四つ辻であればまっすぐ進むと家路だが、ここでは右に曲がる。いつも浮草が住む世界であれば、道の先には小高い山の上にある通い慣れた小学校と、将来通うことになる中学校が見えるのだが、いまは黒々とした山陵が聳えている。あの山のふもとまで行けば、家に帰る手段がある。


「久しぶりだなー、きさらぎ駅に来るの」



◆ ◇ ◆



 ほどなく浮草は、家並みから遠ざかり、空き地だか放棄された畑だかよくわからない不毛の地をトコトコ通りすぎる。ここはときどき、白骨死体がいくつも倒れていたりするが、今回はただの荒れ地だった。

 黒々とした山のふもとに、大きめの建築物が見えてくるーー木造建築の無人駅だ。

 古く寂れているが、ここには気配がある。利用されている、という気配が。

 駅前には、駅舎と同じくらい古びたバス停があり、錆びて字の掠れた標識には「きさらぎ駅前」とある。

 バスの来る予定時刻表は、めちゃくちゃな数字の羅列になっていて全く分からないのだが、その隣の掲示物はやたら新しくて「ICカード対応。ご乗車の際はタッチしてください」と書いてある。

 ここのバスは、前乗り先払いだったり、固定料金だったり、中央乗り後払いだったりと何が来るかわからないのが、けっこうややこしい。

 屋根付きのベンチがあるので、気まぐれなバスが来るまで、浮草は座って待つことにした。

「気を付けてたのに、なんで昔みたいに勝手に入っちゃったんだろ」

 浮草がまじめな顔で腕を組み、むーんと唸っていると、

「すみませんねえ、アタシらがお呼びしたんですよぉ」

 いつのまにか目の前に、作業着姿の中年男性が、ペコペコと頭を下げていた。

「時空の管理人さん?!」

はじめまして

或いは、おひさしぶりです


きさらぎ駅を、リアルタイムで観測していたネット老人でございます

実写映画「きさらぎ駅」「きさらぎ駅Re」どちらも視聴済みです。めちゃめちゃ好きです、この映画


そんな人間が書いております

どうぞよろしくお願いします

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