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【001】梅干し置き場の地下室のさらに下へ続く梯子


 俺はじーさんと二人暮らしだ。

 じーさんはいつも“研究室”と呼んでいる仏壇の間にこもって、作業台の上で何かを書いている。写経だろうか。墨彩画だろうか。立ち入るなと言われているので、詳しいことは知らない。それでも両親が亡き今、たった一人の家族だ。


 じーさんの他の唯一の趣味は、漬物をつけること。

 俺はバキバキの肩を鳴らしながら、地下室へと向かった。キッチンの床に、蓋状の入り口があるので、それを持ち上げる。すると一面コンクリートの部屋があり、棚が設置されていて、壺につけられた漬物が多々ある。


 俺は冷蔵庫の中身を考える。料理は基本的に俺の仕事だ。

 じーさんの年金と、俺の稼ぎ……俺は高校生なのだが配信で収入を得ていて、それが微々たるものなので、まぁほぼ年金でご飯を食べている。いいや、実際には俺はさらに副業のようなこともしている……。それにしても、今月は修学旅行の積み立てがあったから特に厳しい。そのため冷蔵庫には、近所の人がくれたキュウリとトマトしか入っていない。


「仕方ないな……」


 俺は床を見る。そこにはまた、丸い蓋状の戸がある。実は地下室の下にはさらなる地下がある。ダンジョンがあるのである。ダンジョンといっても、一本に伸びている三十階層ほどの縦長で細い一方通行のシンプルなもので、危険なモンスターや植物は見たことがない。小さい頃は怖かったけど、その頃は父さんや母さん、ばーちゃんやじーちゃんも一緒にいってくれたので安全だった。今は一人で余裕である。なんでも日本には、七つの核ダンジョンと、そこから広がる多くのダンジョンがあるらしいが、我が家の地下は平和だ。


 俺は壁に立てかけておいた槍を手に取る。今は、全日本人がダンジョン有事に備えて、モンスターを倒すための武器を持つことに決まっている。これはじーさんが作ってくれたものだ。左手には、リストバンド状の白い計測具・ジェネレーターが嵌まっている。


 俺は地下の地下へ梯子を伝っており、床に着地した。

 苔と蔦で覆われている。

 それらも食べられるが、野菜系は今はいらない。


 それから二階層ほど降りると、牛によく似たモンスターがいた。モンスターは倒すと粒子になって消えてしまうのだが、粒子になる前に切断した部分はそのままの形で残る。俺はそのモンスターを気絶させて、倒さないままで解体した。そして肉を切り分けてパックにしまってから、倒した。すると粒子になって消えていった。


「うん。これだけあれば大丈夫だろう!」


 なお、牛型だが、味は豚肉に似ている。


「今夜は焼き肉だな」


 いいなぁと思いながら、俺は地上の家へと戻り、キッチンに立った。

 そして焼き肉の用意をし、じーさんに声をかけたのだが、『海渡(かいと)。悪いが今忙しい』と言われて、一人焼き肉をすることになった。ちょっとだけ、寂しかった。


 食後入浴を終えてから、俺は自室で配信をすることにした。


「今日も配信を始めるぞ」


 宣言してみたが、PVは0である。誰も来ないが、喋っていなければもっと誰も来ないだろうと、俺は必死で笑顔を浮かべながら話す。俺は顔出しライブ配信をしている。高校一年生の時からやっているから、もう一年以上が経過した。現在俺は高校二年生だ。


 話のネタは、リアルな高校生活。

 しかし多分、面白味はない。

 俺は陰キャでも陽キャでもない、空気のような存在だからだ。平凡。それにつきる。


「一名様ありがとうございます。あ、(ゆずりは)、こんにちは」


 PVが1になった。これだけでも俺には嬉しい。

 楪というのは俺の数少ない定期的に来てくれるリスナーだ。

 来てくれたことに喜びながら、俺は配信を続けた。


「本日は二名様ありがとうございました。また見てくれよな!」


 こうして本日の配信は終了した。


「ふぅ」


 一息ついて、インスタント珈琲を飲む。


「さて……これから、副業か」


 俺はぽつりと呟いた。


 俺の副業――それはまさしくダンジョン攻略である。家の地下のダンジョンは何度も何度もボス討伐まで行い、ボスは復活するので何度倒したか分からないほどで、もう色々と熟知しているのだが、核派生ダンジョンは勝手が違う。ボスは一度倒せば粒子になって消滅する。それに食べられる植物や、採掘できるポイントが多い。俺は色々と採取して、スカディリッシュ社の買い取り機関に納品している。本来であれば、これは……結構いい収入になるはずだ。しかし我が家には借金があるため、生活費に転用出来るのは一部で、主に借金を返すのに使っている。借金はよく分からないが、祖父がしたらしい。だから誰のせいにもできない……。


 俺は地下室から槍型の武器を持ってきて、市販の討伐服に着替えた。黒くゆったりした服とネックウォーマー。これは時折魔物が放つ瘴気を避けるためだ。そして頭部を守る大きなフード。目深にかぶると暗視ゴーグルのような視界になる。


「よし行くか!」


 こうして俺は、俺の暮らす葉純区の端にある【青闇ダンジョン】に臨むことにした。

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