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私の知らない世界でも、時は刻まれている  作者: カドイチマコト
六章、猫ちゃん保護編

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第88話、不安だね、保護しに向かうこの面子。11


「ちっ、浅かったわ」


 言葉を聞き、援護するべく精霊を顕現させる。その刹那、前へ足を踏み出していくクミの姿が視界をよぎった。そのままユウシの後ろに歩み寄ると、軽く手を前に振り、諭すように語りかけた。


「まあまあ、その辺りでお止めなさいな」


 途端、大きな白い蛇の動きがピタッと止まる。そして頭を返し、ズッズッと音を立てながらこの場を離れ、ゆっくり奥へ進んで行った。


「おい、逃さぬぞ」


 ユウシが叫び、追いかけようとする。しかし、シエンが肩をさっと掴む。


「陛下、後はお任せを」


 そう言い、すっとユウシの前に出て、掌をかざす。


「三式……」


 その発動を遮るようにクミが告げる。


「それよりも、来ますよ?」

「えっ?」


 言葉を聞き、私は周囲の状況に神経を尖らせた。程なく、タッタッタッタッという音とともに、長い胴体の動物たちが目の前に現れる。一難去ってまた一難。またこいつらであった。


「ガーッ」


 こちらを向いて鳴き声を上げた後、牙をむく。すでにやる気――


「なんじゃ、あれは」

「すばしっこくて嫌な動物です」

「それなら、前衛である儂の出番じゃのう」


 そう言って、ユウシは剣を構えた。すぐさま、私は声を上げ、その前に出る。


「いえ、数が多くて危険です。下がってください」


「たわけ! 子供に守られるほどこの剣は錆びついておらぬわ。後ろに隠れておれ」

「ですが……」


 言い争っている最中、勢いよく傍らをなにかが横切った。長い胴体の動物たちが四散する。


「魔法?」


 目を向けると、シエンがかざした手から、次々に魔法弾が放たれていた。あぜんとしていたところ、視線が交わる。


「まあ、いくら相手が速かろうと、数を打てばそのうち当たりますよね」


 ――魔石による連射。いつもながら合理的な考え。


「むう、儂も負けてはおれん」


 ユウシはそう言った後、孤立している二匹の長い胴体の動物に向けて、じりじり間合いを詰めだした。すぐに制する。


「シエン様にお任せして下がりましょうよ」

「臣下が頑張っておるのに儂だけ引けぬわ」


 そうこうしているうち、長い胴体の動物が飛びかかってきた。


「せいやー」


 ユウシが威勢の良い掛け声を発し、鋭く薙ぐ。開いた長い胴体の動物の口へ、吸い込まれるように剣筋が走る。瞬時に真っ二つに切り裂き、勢いよく鮮血がほとばしった。


「きゃっ」


 間髪入れず、右側から残る一匹も襲いかかってくる。とはいえ、ユウシは剣を振り抜いていた。間に合わない。そう思ったものの、腕を引き、柄の底で顔を打ちつけた。


「キッ」


 短い叫び声を上げて、長い胴体の動物が地面を転がる。


 はたから見ると、うまくいったかのように映った。しかし、腕からポタポタ落ちる雫が地面を濡らしている。どうやら傷を負ってしまったらしい。


「血が……」


 クミがユウシに近寄り、腕を見て語りかけた。


「あらあら、大変ですね。どうしましょ」


 その間に長い胴体の動物は体勢を立て直し、ひるまずに威嚇してくる。


「ガーッ」

「んーその態度、ちょっと不快ですわね」


 クミが告げた直後、襲いかかってきた。


「仕方ありません。おイタする子はメッです」


 ゆっくり手を振りかぶり、バチンと張り倒す。当たった瞬間、バキッといやな音が聞こえた。長い胴体の動物は地面に叩きつけられると、ボールのように跳ね、再び落下する。


「キッ」


 そして、短く鳴き声を発し、動かなくなった。


「……あら、ちょっと強すぎたかしら」


 こちらは片付いた。急いでシエンの方を見やる。


 逃げ惑う長い胴体の動物を冷静に仕留めていた。残りは少なく、あちらも問題ない。とりあえず、無事に済んだようである。とはいえ、寿命が縮む思いをした。


「ちょっと、傷を見せてください」


 ユウシの腕を掴み、目を落とす。この程度であれば魔法で治せる気はしたものの、白い精霊を無闇に人に見せるべきではないというセイジの忠告が脳裏をかすめた。ゆえに、傷口を水の魔法で洗い流し、綺麗にした後、包帯を巻くことにする。


「すぐに手当てするので座ってください」


 作業を開始して間もなく、ユウシが話しかけてきた。


「うまいものじゃのう。血は争えんてか」

「学園の授業で学んでいますので」

「ほう、これは真面目に勤しんでおるようじゃ」


 呑気に話すユウシの言葉を適当に聞き流し、テキパキと済ませる。


「終わりましたよ。御身になにかあれば私たちも困るんですから、無茶しないでください」


 そう言うと、自重を促す意味を込め、軽く腕をぺちっと叩いた。


「いたたたた。でも、どうじゃ、儂もまだまだやるじゃろう?」


 効果がない。無邪気に話すユウシを見て懸念を抱く。問題が起こってからでは後の祭り――今まで気さくに接しすぎたと反省する。諫めようにも、ユウシは国王。他の二人でも荷が重いであろう。


 元々は猫ちゃんを保護したいという私の我儘に近い願いが発端。なんとかしなければと、突き放すように毅然とした態度で苦言を呈した。


「陛下、実力は重々承知いたしました。次からはおやめくださいませ」

「じゃがのう」


 言い訳しかけるユウシに念を押す。


「よろしいですね?」

「う、うむ……」


 災い転じて福となったかもしれない。いい薬になった。満足した私は立ち上がると、みんなに向かって語りかけた。


「さて、先を急ぎましょうか」

ご拝読ありがとうございます。

次話更新は三月九日となっております。


カクヨムでも同一名義で連載中。

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