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私の知らない世界でも、時は刻まれている  作者: カドイチマコト
六章、猫ちゃん保護編

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第82話、不安だね、保護しに向かうこの面子。5

 ジュジュの案内で乗ってきた馬車へ戻ると、ユウシがさっと乗り込んだ。


「ん? なんか焦げ臭いのう」


 中でクンクン匂いを嗅くユウシに、困惑しつつ応える。


「えっと、ちょっとした問題が起きまして……」

「そうか、まあ、空気を入れ替えれば気にならぬかな。よっと」


 そう言って座席に腰を下ろし、横にある窓を開けた。最高位の人物なのに偉ぶらず、しっかり端に座っている。シエンとは大違いであった。


 私はクミとジュジュ、同性で三人座れるようにと考え、ユウシの向かいに着席する。その思いを無下にするかの如く、乗り込んできたシエンは真横に座り込んだ。思慮のなさにうんざりする。


 すぐさまバンと手で座席を叩き、声を荒げた。


「ちょっと! あちら側に行ってください」


 シエンは私を一瞥して、気だるそうに応える。


「はいはい、分かりましたよ」


 そして、ゆっくり立ち上がり、ユウシの横へ移動した。その後、クミが乗り込んだところで、ジュジュが言葉を投げかけてきた。


「私はここでお別れでございます。各々方、くれぐれも陛下をよろしくお願いいたします」


 深く頭を下げる姿に、ユウシがすかさず反応する。身を乗り出し、呆れるように言い放った。


「おいおい、親にならって心配性だのう」


 先日のやりとりのような行動を日頃から見ているユウコから、いろいろ聞かされているとすれば、ジュジュが不安になるのも無理はない。おまけにユウシは国王、人民の支柱である。それに引き換え、二人の返事は軽いものであった。


「まあ、善処いたします」

「そうですね」


 なんだか気の毒になってしまう。


 しかし苦手とはいえ、この二人と行くよりも、ジュジュの方が頼りがいがある気がする。それゆえ、離れる理由をすぐさま問いかけた。


「えっと、お別れって、同行なされないのですか?」

「私はこの後、演習の指揮を取る予定です」


 心配であればそれを断って、ついてこればよいと思いながらも、さすがに口にはできない。言葉を飲み込み返事をする。


「そうなんですね。頑張ってください」

「アカリさん、ありがとうございます。もし、なにかあった場合には、すぐに軍が駆けつけますので、渡してある発煙筒を遠慮なく使ってください」


 ――その言葉でピンときた。


 多分、演習は名目であろう。問題が起こった場合に備え、すぐに行動できるよう、大森林近くに人員を集めておくための策略。


 しかしながら、ユウシのことを思う一心での対応に違いないものの、大がかりな気がしてならない。とはいえ、ひとまず配慮に感謝し、礼を述べる。


「分かりました。ジュジュさん、ありがとうございます」


 続いてユウシが語りかけた。


「そうそう忘れておった。ジュジュ、忙しくてもたまには顔を見せるんだぞ」

「わかりました。それでは陛下、ご武運を」

「うむ」


 返事の後、ジュジュはゆっくりドアを閉め、御者に大声で告げる。


「では、お願いします」


 その言葉で馬車は大森林へ向けて走り出した。門を抜け、大草原に出たところで、ふと猫ちゃんたちを保護する場所の進行具合が気になり、軍事特区あたりの外壁に視線をやる。


「えっ、もう、あんなに……」


 予想だにしない光景を見て、驚きの声が漏れた。


 この場所に保護するというユウシの提案を受けてから、まだ半日ほどしかたっていないにもかかわらず、すでに枠組みが完成している。


「おお、さすがユウコじゃのう」


 早い謎はすぐに解けた。セメントと木の二重構造で建築されている外壁の一部の木壁が取り払われ、内壁がむき出し。そこにあった木材を使用したのである。


 あの方法ならわざわざ資材をよそから運搬する必要がない。かなり時間の短縮になるであろう。切れる頭に感心しつつ、こちらも負けぬよう頑張らねばと気を引き締めた。


 程なく馬車が止まり、御者が告げる。


「到着いたしました」


 その声でユウシが真っ先に降り立つ。私も続くと、そこは大森林手前の道の分岐であった。


「さて、猫ちゃんはどこかのう?」


 ユウシの問いかけに、奥の方へ指を差しながら応える。


「いつも見かけるのはもう少し先ですけど」


 シエンとクミの二人が車外に出たところで、御者が話しかけてきた。


「では、私は王都へ戻りますのでお気をつけて」

「ありがとうございました」


 礼を述べ、軽く頭を下げた後、私を先頭に大森林へ足を進めていく。踏み入れて間もなく、あることをふと思い出した。


「あっ、そういえば。クミさん鎌は?」

「鎌でしたら馬車に……」

「その馬車はもう帰っちゃいましたよ?」

「あらあら、困りましたねぇ。どうしましょう?」


 それはこちらのセリフである。引き返し、王都まで戻るわけにもいかず、いかんしようもない。幸先悪く、いきなりつまずいてしまった。


「どうしましょうと言われましても……」


 困惑する私をよそに、他の二人はいたって冷静。


「冒険にはトラブルがつきものだし、なんとかなるじゃろうて」

「魔法の心得があるのでしたら、それで対処すればよろしいのでは?」


 あっさり解決案を出した。やはり、なんだかんだ言っても頼もしい。まだまだ修行が足りないと思いつつ、クミに語りかける。


「とりあえず、先に進みましょうか」

ご拝読ありがとうございます。

次話更新は二月七日となっております。


カクヨムでも同一名義で連載中。

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