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第8話、だるかった、この結果には不満足、3

作者からのお断り。

構想は定まっていますが、執筆速度が激遅ゆえ、完結まで相当時間が掛かります。

興味のある方は作品をフォローして、気長にお待ちください。<(_ _)>

 次は持ち上げられる重さの限界を測るという、単純な試験。目の前には十キロから五十キロまで、五キロ刻みの重りが用意されていた。


 最近持った物の中で、一番重かったものを考えてみる。冒険者組合へ行く際、装備を入れている赤いトランクケースであろう。多分、五キロもない。


「よろしくお願いします」


 軽く会釈し、最も軽い十キロの前でしゃがみ込む。重りの上にバインダーを置き、手を伸ばして、持ち上げようとした時、ドンと物音が聞こえた。


「ん?」


 顔を上げたところ、机から身を乗り出し覗き込む、試験官Bの姿があった。


「あの……何か?」


 尋ねると試験官Bは顔をそむけ、軽く咳払いをした後、告げる。


「はい、ここまで。もう結構です」

「ええっ?」


 意味が分からず、声が漏れた。


 姿勢を正し、バインダーを差し出すと、試験官Bは片手で受け取り、スタンプをポンと押印する。記入用紙には、またもや測定不能とされていた。


 試験官の応対に首を傾げつつ、床に描かれている矢印を進み、会場の出口へ向かう。ドアの陰に、ここへ案内してくれた女性が、壁に寄りかかりながら、腕を組んで立っていた。


 若干震え、眉間にしわを寄せている。受付で最初に見たときよりも、目つきは険しい。しかし、私がドアまで足を進めると、姿勢を正し、表情がやわらぐ。


「次はこちらでございます」


 そう告げた女性は、来た時と同じように前を歩き、案内してくれた。


 次の試験は魔術の実技である。受験者の列で、女性に手でどうぞと促された私は、軽く会釈し、最後尾に並ぶ。その後、女性は隣接する王立図書館の壁際に行き、そこを背にして、腕を組み、こちらをじっと見つめていた。


 その直後、呼びかける声が耳に届く。


「ジュジュさん、ご苦労さまです」


 女性が見上げ、二階の窓にいた男性に軽くお辞儀をする。その姿を見て、この人はジュジュという名前であることが分かった。


 やりとりを眺めていた時、男性に微笑まれた気がした。私は軽く頭を下げると、試験の様子を伺うため振り返る。受験生たちは張り詰めた空気が漂う中、巨大な壁に設けられた三つの的の前にそれぞれ立ち、魔法を放っていた。


 静かにフォーク並びで順番を待っていたところ、学園の正門より馬車が次々と入ってくる光景を見て、校舎の設置されていた時計に目をやる。時刻は既に十時を過ぎていた。


 貴族枠の受験生が来る前に、全て終わらせる予定であった。しかし、順番はなかなか進まない。その理由は、魔法は発動後、一定時間経過しなければならないからある。魔法を五回放つ試験であるため、クールダウンが一分程度の私でも、最低四分以上の時間が必要であった。


 諦めつつ、試験を行っている者を一人ずつ観察する。


 右端の受験者は、放物線を描くように炎の魔法を的に当てていた。しかし、あの速度と威力では実用性に欠けるであろう。


 中央にいる受験者は緊張しているのか、手が震えている。顕現させた水色の精霊も不安定であるため、おそらく当たらないと予想した。


 思った通り、放たれた氷の魔法は的から大きく外れる。そして、あさっての方向へと飛んで行き、周囲に小さな水たまりを作り出していた。


 左端の受験者に目を向けようとした時、試験官Cが声を上げる。


「そこ! 邪魔だから、早くどけ!」


 中央の受験者は、あれが最後の五回目だったのか、うなだれるようにしゃがみ込み、泣いているようであった。しかし、その言葉で立ち上がり、うつむき加減で試験官Cの元へ足を進める。そして、記入用紙を差し出していた。


 ようやく私の順番が回ってきた。


「次!」


 試験官Cに促され、軽く会釈し、スタートラインに立つ。


 目測では、的の大きさは直径一メートル、真ん中の赤い部分は三十センチ、距離は五十メートルくらい。的は大きく、距離もそこまで遠くなく、動かないとなれば、外れる要素は一つもない。


 左手をかざし、瞼を閉じて、軽く深呼吸をする。


 ぱっと見開き、精霊を顕現させようとした瞬間、的が設けられていた巨大な壁の上を、左から右へ横切る、黄金に輝く剣を掲げた人の姿らしき物体が目に映った。


「何あれ?」


 それが気になり、目で追いかける。壁が途切れた場所から見えてきた全体像は、太陽の光を浴び、キラキラと輝く大きな馬車の屋根に取り付けられた装飾であった。しかし、あれは実用性を完全に無視した、権力誇示のための悪趣味な馬車に違いない。


「そこ、早くしろ!」


 試験官Cに急かされて我に返る。謝罪の意味を込め、軽く会釈し、的に向き合うと再び手をかざした。そして、顕現させた緑色の精霊に魔力を注ぎ、普段通りの感覚で魔法を放つ。

ご拝読ありがとうございます。

視力が悪く文字を拡大して執筆しているため、改行が多く読みにくいかもしれません。

誤字脱字には気をつけておりますが、お気づきの点がありましたら連絡いただけると幸いです。


主人公の前日譚もあります。

https://ncode.syosetu.com/n3734jx/


カクヨムでも同一名義で連載しております。

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